No.78 ちびっ子轟狐
「な…なんで轟狐がこんな所に…っていうか、ホントに轟狐?」
いや…この子らが轟狐かどうかに関わらず、轟狐っていう単語を知ってるって事は…。
「おい、蓮斗、あいつら轟狐だとかなんとかって言ってるけど、もしかしてあいつら、あっちの世界から来たって事?」
「多分…。だけど、一体どうやって…」
すると、自称轟狐のちびっ子二人が俺の前にやって来た。
「きさまがリノウエレントだな!? ぼくたちはおまえをたおしにきた!」
「リノ『イ』エな。って言うか、なんで俺の名前を知ってんの? しかもフルネームで…」
「あなたにはおしえなーい」
女の子は、どや顔で言って見せた。
「では、リノウエレント、かくご~!!」
「かくごしなさーい!!」
ポカポカポカポカポカポカポカポカポカポカ…
恐らく、この子としては今、渾身の攻撃を繰り出しているのだろうが、残念ながら俺にとっては少し強めのマッサージを受けている位にしか感じなかった。
多分、周りから見たら、子供と戯れてる位の光景だろう。
「キ、キロ、こいつなかなかつよいよ!」
「くっ…さすがはわが轟狐にたてつくだけのことはあるな…」
流石に埒があかなかったので、仕方なく俺は二人をひょいと抱えて職員室に持ってく事にした。
「あ、コラ、はなせきさま! ぼくたちをいったいどうするつもりだ!?」
「わーん、キロ、たすけてー!」
「駿、こいつら職員室にしょっぴいて行くから、一緒に来てくんない?」
「あ、あぁ、良いけど…」
「こら、はなせっていってんだろうが! きこえないのか!?」
「聞こえてるよ。聞こえてる上で俺はお前らを連れてくんだ、少しは大人しくしろ」
「え、あ、はい」
若干大人気なかった気がしないでもないが、こうでもしないと黙らなそうだった。
「失礼しまーす」
「おぉ、李家と高橋! その子供は…」
職員室に入ると、先生達がみんな集まっていた。
「あー、なんか教室に居たんで、捕獲しました」
「そっかそっか、なら良かった…。しかし、一体どこの子だ…? 君達、お名前は? どっから来たんだい? お母さんとお父さんは?」
「ふん、おまえらなんかのしつもんにこたえるか!」
「おい李家、この子供達いきなりムカツクぞ」
「いや、先生どんだけ沸点低いんだよ。ほら、おまえら、どっから来たんだ? 答えろ」
「なんどもいわせるな! ぼくたちはおまえらのいうことなんか…ちょ、ちょ、やめろ、くすぐるな!! あは…あはははははは!」
「ホラホラ、ちゃんと答えないとずっとくすぐり攻撃が続くぞ~」
「ごめんなさい、あ、あやまるからゆるして~」
くすぐり攻撃が功を奏した様で、二人共ようやく大人しくなった。
女の子の方に至っては、何故か俺の膝の上ですっかり落ち着いてしまっている。
「で、お前達は一体どっから来たんだ?」
「…わからない」
「分からない?」
「…ぼくたち、ほかの轟狐のひとたちといっしょだったから、わからない…」
「迷子…?」
「まいごなんかじゃない! ばーかばーか!」
「参ったな蓮人、この子らってあっちの世界から来たっぽいよな…。神社に居たのか?」
「わたしたち、おまえをたおそうとしてキロといっしょについていったら、ひかりがぶわぁって…」
「はぁ…成程、俺達がイクタ村の神社からこっちに戻って来る時に一緒に来ちまったって事か…」
「ん? 李家、高橋、イクタ村ってなんだ? それにさっきからあっちの世界とかこっちの世界とか…」
「あ、いや、なんでもないです! 気にしないでください! ゲームの話です! な、駿!」
「おぅおぅ、そうゲームの話っすよ、先生!」
「え、急にこのタイミングでゲームの話してたの? どういう事?」
やばいやばい、やたら滅多にあっちの世界の事を口に出すもんじゃないな。
下手したら中二病扱いされちまう。
「この子達をどうするかは全部先生達がやるから、お前達はもう教室に戻りなさい。まぁ多分警察に保護される事にはなると思うんだけど」
「分かりました。じゃあお前らちゃんと先生達の言う事聞くんだぞ?」
そう言いながら、膝の上で寛いでいた女の子を膝から降ろした。
「じゃあな」
すると、二人は突然俺と駿の方に駆け寄って来て、しがみついて来た。
「お、おい、お前らなんだ急に」
「ぼくとテン、どっかしらないところにつれてかれるの!?」
「別に怖い所になんか連れていかれないよ。警察って所に一時的に預かってもらうだけだから」
「やだやだ、わたしリノイエレントといっしょがいい! しらないところいきたくない!」
女の子の方が急に駄々をコネだしてしまった。
「お前らよく分からないけど、俺を狙ってたんじゃないのかよ! 敵に助けを求めるな」
「やだ~、いっしょがいいの~!」
とうとう女の子は泣き出してしまった。
男の子の方も半べそ状態である。
「大丈夫だって、警察の人達がきっと元居た所に帰して…帰し…」
いや、警察に保護されてる内は一生この子達、元の世界に帰れないぞ。
この子達が異世界から来ただなんて、誰も信じちゃくれないだろうし…。
って言うか、この子達をあっちの世界に戻せるのって俺とじいちゃんしか居ないじゃん。
俺は大きな溜息と共に、いくら轟狐といえども、見捨てる事が出来ない自分の甘さに呆れるしかなかった。
「あー、先生、一旦この子達、俺んちで引き取ります…」
「いや、李家、お前何言ってんだ!? とりあえず、警察に保護してもらって、身元の確認とか両親の居場所とか諸々調べなきゃいけないだろ!」
「いえ、俺、よく考えたら心辺りあるんで。そこ行って確認してきます」
「心辺り? ってか確認って何!?」
「って言うことで俺、一旦早退します。用済んだらまた学校戻るんで」
「え、え、蓮斗? もしかしてお前帰んの? マジな奴?」
「残念ながらマジ。よし、お前ら行くぞ。手ぇ離すなよ」
「ねぇねぇ、どこいくの~?」
唖然とした顔をしている先生や駿を尻目に、俺は再び家を目指してちびっ子二人を連れて歩いて行った。




