No.100 Side ユウ・テルジーナ④
「んあ…朝かぁ…」
レンがようやく身を覚ました。
「うわ、ビックリした! なに人の顔ガン見してんですか!?」
「いや、寝てたから…」
実際は、レンが目を覚ました事にビックリして反射的にベッドから取り出して、レンの様子を見ていただけだ。
まぁレンが寝てる間はガン見してたっちゃしてたけど…。
「まぁ寝てましたけど! なんで寝てる人の顔をガン見してたんですか」
「いやぁ、気持ち良さそうに寝てんなぁ…って」
「ユウさんの方が百倍気持ち良さそうな顔して寝てましたけどね!」
な、あたしが寝てた時に寝顔見られてた!?
あたしが起きる前の話か?
レンに寝顔を見られてたとか…
メチャメチャ恥ずかしい…!
「てめ、コラ、なに人の寝顔見てやがんだ!」
「その言葉、そっくりそのままアンタに返すわ!」
その後、家に泊めて貰った御礼だとかで、レンが朝食を作ってくれた。
相変わらず美味しかったが、意外にも家では料理をあまりしないらしく、朝食は毎日スーが作ってるらしい。
なんかあれだな、もう完全に夫婦って感じたな。
付け入る隙がないな。
いや、別に付け入ろうなんて、思っちゃいねぇけど!
「良いな、家族って感じでよ」
「ユウさんにだって、お父さんが居るじゃないですか」
「父ちゃんと二人で居たって、そんな感じにゃならねぇよ。お互いに照れちまって…」
「ユウさんが照れ屋なのってお父さん譲りなんですね」
「ぶっ飛ばすぞこのヤロー」
ったく、あたしがついさっきまで全く別の理由で恥ずかしがって事も知らねぇで…。
いよいよ、ロジさんの家に出発すべく、準備をしていた。
「いいか、この森を真っ直ぐ行けば、村に出る。後は道とか分かんだろ?」
「はい、色々ありがとうございました。まぁ戻れなかったら、またここに来るかも知れませんけど…」
「いや、縁起でもねぇ事言ってないで、さっさと行ってこい!」
でないと、あたしが持たなくなっちまうんだよ!
「じゃあまた!」
「おう、気をつけてな」
こうして、レンはロジさんの家への道を駆け抜けて行った。
あたしは、その後ろ姿をいつまでも見つめていた。
「まぁ…行っちまったなぁ…」
その言葉とは裏腹に、ようやく行ってくれてホッとしている自分が何処かに居た。
もしあのままずっとレンが居たら、どうにかなってたかもしれない。
スーにも顔向け出来ない…。
「もっと強くなんねぇと!」
違う…それは自分に嘘をつくという事を意味していた。
「うぅ…次からどんな顔して会えば良いんだよ…」
せめて、今回は無事に元の世界に戻ってくれと願うばかりだった。
それから、どれ位時間が経っただろう。
ようやくあたしも落ち着いてきた。
「はぁ…今日は朝の見回りもできなかったなぁ」
レンを意識しすぎて、レンからの頼み事を疎かにしちまうたぁ、本末転倒だ…。
ちょっと遅いけど、行ってくるか。
家を出て、真っ直ぐ村の方に向かった。
そういえば、レン達はどうしてるんだろうか?
まだ村に居んのかな?
まぁ流石にそんな速攻で帰れるほど、都合良くはねぇわな。
「あれ、っつー事ぁ、村でレンに出くわすんじゃあ…」
いやいやいや、今は無理だって!
今会ったら、あたしまたおかしな事になる!
いや、落ち着け、別に村に行ったからってレンに出くわすたぁ限らない!
それに、レンに出くわすのを恐れて、頼まれた仕事も満足に出来ねぇんじゃお笑いもんだぜ!
「うし、腹くくって行くか!」
敵襲があった訳でも無いのに、こんなに緊張する事があんのか…。
「ん…?」
何やら、周囲の空気が変わった。
妙な圧迫感がある…。
あれ、あたしこの感覚に覚えがあるぞ?
「これって…」
そうた …昨日、レンがこっちの世界に現れた時にも同じ感覚を味わってるんだ…。
「って事ぁ…」
あたしはほぼ反射的に違和感の感じる方へ駆け出して行った。
あれだけ会うのを躊躇い、逃げていたハズなのに、体が勝手に動いていた。
「レン…!」
行ってどうする?
会ってどうする?
それは何も分からなかったけど、理屈じゃない何かがひたすらにあたしを突き動かした。
森を抜けて村に出ると、そこには見たことも無い、空間の裂け目の様なものが広がっていた。
「これがレンの言ってた…」
俄には信じられない光景に圧倒されていると、目の前にはレンとレンのじいさん、あとシュン…だっけ? そしてロジさんが集まっていた。
「レェェン!!」
気が付くと、あたしは腹式呼吸を駆使して声を出していた。
「ユウさん!?」
レンはあたしの声に気が付くと、少し驚いた様な顔でこちらを振り向いた。
するとみるみる内に3人が空間に吸い込まれていく。
どうやら、またあの中に入って元の世界に戻る算段らしい。
つーか、あれ大丈夫なの!?
生きて帰ってこれんのか!?
入っていいもんなの!?
どんどん3人が見えなくなっていく。
あたしはレンに声を届かせるように、全身を震わせて、叫んだ。
「レェェェェン!! 絶対無事に元の世界に帰れよぉぉぉ!! そして、また絶対戻ってこい!!」
するとレンはこちらを見て、若干の笑みを見せると、親指を立てて叫んだ。
「約束ですっ!!」
そして、3人は空間に飲み込まれて、消えて行った。
「…絶対だぞ…バカ…」
今はもう何もない目の前を、ただただ見つめていた。




