リリィの本体
「「!!」」
鬼雨は不敵、大胆に宣言する。それは2人を刺激するのに充分すぎるほどの興奮と怒りを与えた。
「ようやくか!」
「この時をどれほど待ったか……」
「あぁ、決戦は明後日だ。場所は、ここだ」
鬼雨はメイドを呼び、世界地図を出させた。人差し指で指した場所は、太平洋のど真ん中。そこは衛生でも確認できない目に見えない結界が施されており、無数のガーゴイルが飛んでおり、国の軍にも匹敵するほどの武器や装置がある。
「ここは……」
「どういうことだ? 吸血鬼!」
「俺のいた組織は白夜叉とグルだった」
実際、これに気がついたのは、鬼雨が王になってからすぐだった。先代の王から受け継いだ底資料。図書館とも言えるほどの本の量がある。そこで見つけたのは『神々の秘宝』。鬼雨の中に眠るものだった。
「俺の中の何かのために奴らは手を組んだ。そして、それを開けるのは数々の危機感と絶望。これが開ける条件だ」
「……つまり、お前は今満たしているのか」
「そうだ」
「おい、吸血鬼。取り出せねぇーのか?」
「それは無理だ。鍵がいる」
鬼雨は確信している。鍵とはリリィであると。そして、秘宝の中身も。
「大丈夫だ。鍵は来る……だから、俺達のやることは……」
「あぁ、わかってる」
「種族の恨みを晴らす!」
ゲルン、ナルク、鬼雨は互いに顔を見合わせ、コクッと頷く。それぞれの種族の代表がこうして会えることが奇跡に近いが目的は同じ「白夜叉殺し」だ。決戦は明後日、各々準備に取り掛かる。
「以上だ。この戦争……勝つぞ」
赤い目が今日も闇を照らす。
一方、リリィは……現在、イタリア。場所はコロッセオの中心にいた。目の前には母とも言うべき白夜叉似合っていた。
「……白夜叉」
「……」
「私を見せて」
コロッセオのグランドが2人を中心に沈んでいく。エレベーターみたいに沈んでいき、着いた場所には無数の容器があった。そして、1番奥には本体とも呼べる本物のリリィがいた。
「……これが私」
「そうだ、98番」
「……」
「私は『神々の秘宝』で我が子を治す。それが願いだ。そのためにはなんでもする」
「それが、鬼雨を殺してでも?」
「あんな人間はただの入れ物にすぎない。大事のは中身だ」
「……ちょっと1人にして」
「……」
白夜叉は再び地上に出て、空いた穴に向かって飛んだ。
「ククク、面白いね母さん。私がもう完全に治っていることを知らないであんなセリフ……意識を自分に返すか……」
そして、リリィ(98番)は本体の前で倒れた。直後、容器にヒビが入り、水圧でだんだんと漏れだし容器が壊れていく。そして、意識が本体に移ったリリィが容器をサイコキネシスで粉砕する。出て来るとそうそうと背伸びをする。
「んー!長かった!……か・ん・ぜ・んに完治! 待っててね、鬼雨。世界を作り替えて、私たちだけの世界にしようね」
これまでクローンで見てきた鬼雨の姿を思い浮かべ、顔がニヤケる。背中に生えた体を包み込むほどの大きな翼を広げる。
コロッセオの地下、辺りは容器の水でいっぱいの中、裸の吸血鬼姫の目が赤く光る。




