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レベルアップ

 広間から部屋に戻った夜。


「なぁ、リリィ。俺は何なんだろな?」


「どうしたの?」


 鬼雨は布団に蹲っていた。リリィは近くにある椅子に座り、優雅に紅茶を飲んでいる。


「いや、どうしてこんなことになってるのかなって……」


「それは……ごめん、私にもわかんないや」


 リリィは湯気がたっている紅茶を静かに口に運び、啜るように飲む。それを見ていた鬼雨は紅茶に興味を持ち、リリィに入れてもらうよう頼んだ。


「なぁ、リリィ。なんで俺が王なんだ?」


「んー? それは私が王になれないからだよ。言ってなかったけ?」


「…………聞いてない」


「あはは。ごめん」


 リリィは軽く謝る。もう引き貸せない所まで来てしまったので今更変更は出来ないことは鬼雨は知ってる。


「なんでなれないんだ?」


「お父さんがね……ごめん、あまり言いたくない」


「そっか……」


 鬼雨はこれ以上聞くのを止めた。リリィの言葉が、顔が、目が鬼雨を黙らせた。それはまるで絶望しきった心に怒りを抱えたような顔だった。


 鬼雨とリリィは静かに紅茶を飲む。


「……お、これ美味いな」


「そう?」


「今度部屋で飲もうか」


「いいね、それ」


 このような何にもないたわいな会話が続く。それに耐えかねたのか、鬼雨はあることを思い出した。


「あ、広間におった奴らは?」


「あぁ、サイコキネシスは解除したよ。今さっき」


「今さっき?」


「そう、今さっき。じゃあ、鬼雨。これから王選抜までの1週間実践と行こうよ!」


 リリィは紅茶を飲み干し、元気よく手を伸ばす。訳が分からない鬼雨はただただ混乱するだけだった。


「どういうことだ?」


 鬼雨はリリィに説明を求める。


「えーと。私がみんなを膝まづかせるでしょ?」


「うん」


「私は嫌われてるし、鬼雨っていう新人をいきなり王に選ぶとか言ったでしょ?」


「うん……それで?」


 未だに分からなのか鬼雨はただ首を傾げる。それを面白がってかリリィはさらに説明する。


「吸血鬼は血を重んじる一族なの。そこに新血統の鬼雨がいきなり来たらどうなると思う?」


「そりゃ、怒るわな」


「でしょ? そこにさっきまで縛ってたサイコキネシスを解きました」


「え、ちょっと待て……てことは……」


 鬼雨はようやく理解出来たのか、顔に冷や汗が徐々に溢れ出てくる。リリィは新しい紅茶を入れ、優雅に啜っている。


「そう、怒りは鬼雨に向けられる。しかも王選抜まで何してもいいから…………殺しにくる頃だよ」


 リリィが冷たくはなった一言。その瞬間、綺麗な月を写す窓から数十の吸血鬼によって覆い隠され、月光は消えた。


「え、あ、まじか……」


 窓が破壊され、5人の吸血鬼が先攻して入ってきた。


「よくもさっきはやってくれたな小僧共! 殺してやる!」


 それを見たリリィはニヤリとした。


「はい、鬼雨。こいつらでレベルアップしよっか!」





 王選抜まで残り1週間。鬼雨は全ての吸血鬼を敵に回した。


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