出発
あれから数日経ち、遂に出発する日がやってきた。
場所はいつも通り、白く大きな部屋の地下。そこあるのは、これから出発する2人には思い出深いジェット機。よく見ると、前よりもバージョンが上がったのか、色々と危ない武器まで着いている。
「また……これで行くのか?」
「たぶん?」
運転席には前回と同じく、ガーゴイルが座りながら煙草を吸っていた。
「お、おい。あいつ煙草を吸ってるぞ」
「ま、いいんじゃない?」
「そんなんでいいのか!?」
2人して乗るかと迷っていると、後ろから歩く音がする。
「早く乗れ」
「ボス!」
「これは本来、仕事で使うものだ。今回は特別に貸してやっていることを忘れるな。これが嫌だと言うのなら自分の足で行くんだな」
貸すのが嫌なのか、少し不服そうに、低い声で話してくる。
結局、鬼雨とリリィは乗ることにした。場所が場所だけに仕方がなかった。
「まさか、イギリスとはな」
「まぁね。ここは太平洋のある孤島だから、距離が相当離れているもんね」
2人が乗り込んだのを確認したガーゴイルがスイッチを押して、扉を閉めようとすると――
「待て、これを持ってゆけ」
ボスが乗り込み、鬼雨だけに手のひらにあるものを渡してきた。それは、小さな補聴器だった。ボスが「付けてみろ」と言ったので、付ける。
「ボス、これは?」
「向こうの言語がこれでわかるはずだ」
日本語以外さっぱりな鬼雨にはすごくありがたかった。
「じゃぁな」
そう言ってボスは目の前から消えた。辺りを探していると外から「閉じろ」と声がして、窓から見ると外にいた。
「え、ちょ、どういう事だ!? 今、目の前から――」
「行け!」
ボスの一言が聞こえたのか、ガーゴイルはすぐさまターボーをフル回転させた。
「あー! やだやだやだー! やっぱり行きたくな〜い!」
と、横で拗ねているリリィが、今も文句を言っている。
「え……ちょ、ボス。リリィもこんな状態だし、俺も行きたくな――」
「出発」
そして、またしてもボスに何も言えずに空へと飛び立った。
「またかよぉぉ!!」
旅立つこと1時間、出る時間が遅かったのか、空には満月が出ており、美しく光っていた。横ではリリィが未だに拗ねており、肝心な所を言わずに愚痴をタラタラと聞かされている。
すると、運転席で操縦しているガーゴイルが手の平を挙げている。
「お、おい! リリィ、降りる準備だ。また、飛ばされるぞ!」
飛行機は雲の上、雲に覆われているせいで下は何も見えない。
そして、ガーゴイルのカウントダウンが始まった。しっかりと席に捕まり、心準備をする。
手が、5本、4本――
と続くかと思いきや、急に床が開き、落ちた。
「あ、あ、あの野郎!! 汚ぇぇぇぇー!!!」
自由落下に従い、逆さまに落ちていき、数秒で雲を抜けた。
鬼雨達の目の前に広がっていたのは、電気の明かりで煌びやかに光る夜のイギリスだった。




