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落雷

「あらあら、この前の少年じゃありませんか。なんのようで?」


 九尾が話しかけてくる。それもすごい殺気を込めて。顔はニッコリと笑顔だが、目が笑っていない。


 それに加えて、残り1本の尻尾から狐火を出している。いつでも殺せるという意思表明だとすごくにわかった。


「と、止めに来た。手を引け!」


「ふ、ふふふ、ふふふふふ。止めに来たですって?……今すぐにでも殺されたいようですわね」


 言葉を慎重に選んだつもりだったが、逆に苛立たてせてしまったらしい。もちろん、九尾の顔は見るまでもなく、怒っていた。激怒。みるみるうちに尻尾にある狐火は成長していき、大きくなる。


「はぁ……はぁ……死ねぇ!」


 狐火がこちらに向かう。逃げようとするが、もう遅い。狐火の移動速度はこれまでと比べにならないほど速い。地面が通った跡を残すかのように抉り、溶けている。


 残り5m。その時、狐火は消滅した。否、消された。


「「!?」」


 お互いに何が起きたかわからず、目と目が合った。九尾は何が起きたかわからず、消えた跡を見ている。そこには雷が落ちた後があり、未だに電気が目に見えるほど通っている。


「邪魔するのですか?」


「そこの小僧に少々興味がある」


 目の前には麒麟がいた。山が2つ分はあった大きな体は馬並みの小さな体に変わっており、尻尾は電気の鎖のように空に繋がれたまんまだ。


 姿は変わらないが迫力がさっきとはまるで違う。小さい方が遥かに凄みを増している。


「ふふふ、本体がついに出てきましたか……好都合!」


 九尾の右手の爪が伸び、こちらに猛ダッシュで向かってきた。世界がスローに見えた。九尾は大きくジャンプをし、右手を伸ばす。距離は徐々に短くなり、もうすぐ麒麟の首に当たる。


 ――取った。


 九尾はそう思った。あまりにも簡単に行き過ぎている……と。それはすぐさま嫌な予感に変わり、的中した。



 ドシャン!



「なっ!?……あ、あ、ああああああああ!!」


 雷が落ちた。それも直径10mはある巨大な落雷。普通は2秒あれは長い方だったが、この落雷は違う。


 20秒。


 それだけ長く九尾の元へと落ちた。落ちたあとの九尾の姿はあられもなかった。


 服はほとんどが焦げ、背まであった長い髪は今は肩までしかなく、肌のあちこちには火傷をしており、それが傷口となり、血が溢れかえっている。


「よ、よくも!」


「油断したな……どれ、我が心を入れ替えてやろう」


 麒麟は九尾に向かって角を向けた。

 それはまるで、これから仕留めるかのように……。

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