陰陽太極図
ロケットが発射されて、はや数秒。物凄い速さで重力に逆らって進むため、Gが半端なくかかる。舌を噛み切らないよう、必死で口を閉じるが、重すぎて開けてしまう。
「ッツ!……な、なんでこんなことになってんだよ!」
1分も経っていないのに、苦痛を味わう。動けない。解放されたい気持ちが高まる中、ついに付いた。
満点の星空、空気の薄い場所。雲さえも追い越して、ようやく見れる景色。
「す、すっげ……」
何千、何万と光る星たちが遠すぎるせいで点に見えるが、無数にあるからこその美しい。
「ん……てことは、ここは……宇宙か!? あ、地球……」
さっきまでそこにいた場所は青かった……。海がほとんどなので、そう見えるかもしれないが、本当に青いのだ。
そんな青い星の中に、少し3割ほど緑がある。そして、その中に1つ気になるものがあった。
「あれは……なんだ?」
白と黒の2つの勾玉模様の大きな円が出来ていた。正確には陰陽太極図と言うものが大きな湖の上に描かている。
もっと近くで見ようとした時、ピンポンパンポーンという日常でよく聞く音楽が流れた。
『今から麒麟の元へ向かいますのでご注文ください』
というアナウンスが1つ。どこから流れているかは分からないが流れた。
「え? これから向かうの……かぁぁぁぁあ!!」
突如、ロケットは落下し始めた。
こうして、星を生で見る時間は唐突に終わりを告げた。
「はぁ、はぁ、まさか四獣を倒すのに尻尾を二本も使うとは思いませんでしたわ……」
「まぁ、そう言うな。おかけで準備を整えれたではないか」
「えぇ、あなたが青龍と玄武を相手にしてなかったら今頃もっとやられていましたからね。さっそく準備に取り掛かりましょ」
場所はある中国にある湖。4つの柱がそれぞれ、東西南北に立っており、それぞれ頂上には四獣の彫刻が掘られてある。
「これが、約束の品だ」
「ふふ、感謝しますわ。では、私からもこれを……」
お互いに物々交換をして、ものを確かめる。九尾が白夜叉から貰ったのは麒麟を呼び覚ます鍵。そして、玄武と青龍の血。
「ようやく……ようやく神殺しの始まりですわ」
四獣の残り……つまりは朱雀と白虎は自分で捉えて採取した。四獣のそれぞれの血を塔のてっぺんから流す。これに反応して、湖に異変が起きた。
湖の中心から1つの台が出てきた。人が1人立てるくらいの小さな土台。真ん中には麒麟の絵が書かれており、角だけが欠けている。
「あれが……」
「ふふふ、さぁ、いでよ麒麟! あなた……いや、おまえを殺す時が来たぞ!」
欠けていた所を埋めると、空に陰陽太極図が浮かび上がり、分厚い雲に覆われ、雷が鳴り響き始めた。




