最悪の移動手段
2回目のキスをした後、リリィはベットに横になると、すぐに眠りについた。
「あんなけ泣いたからか……まぁ、仕方ないよな」
スースーと寝息をたてるリリィの顔はどこか安心しきっている顔だった。
「ったく、幸せそうな顔しやがって……大変だったんだぞ〜。わかってるのか〜」
ほっぺたをムニッとつついて見る。見た目の反面、ぷにっとした柔らかな感触があった。
このまま続けたらハマってしまいそうな所にドア越しからボスの声が聞こえた。
コンコンとノックを2回。
「入ってもいいか?」
「どうぞ」
ボスはドア付近に立って見守る。しばらくじっと見つめた後、口が開いた。
「時間が無い。鬼雨、お前一人だけでも行ってこい」
「……どうしてもですか?」
「どうしても……だ。麒麟が殺されるのを止めなければならんのだ」
「じゃあ、リリィはこのまま残して行きます。いいですね?」
「あぁ、構わんさ」
もともとは自分でやると決めたことだから、途中で放棄しては男が廃るというものだ。
ボスは首を右へ振る。付いてこいの合図だった。言われるがままに付いていく。そして、たどり着いたのはまたしても白い部屋。
「また、ここか……」
そして、前回と同じく床が動き、地下へと入っていく。大きな空間がある部屋に付いた。まだ、真っ暗で何も見えない。
「ボス……何も見えないぞ」
「ライトを照らしてやれ!」
手前から無数のライトが付き、明るくなった。そして、そこにあったのは――
「ぼ、ボス……まさか、これで行くのか?」
「ま、時間が無いからな……我慢しろ」
先端が赤。胴体は白。そして、加速装置が4つ。そう、ロケットだ。これならどこにだって行ける。そう、行けるのだが……
「……なんで、こう……おかしなものばっかなの?」
初めて見るロケットに呆気を取られているところにまたしてもやられた。
「グダグダしないで行ってこい!」
背後からまた、スタンガンという名の電気を浴びせられ気絶。
目が覚めると、そこにいた。やたらとおかしい移動手段の中。シートベルトがやけにガチガチで外れない。高いせいか、小さな窓から全体が見えた。大きな装置のところには憎きガーゴイルがいた。
そして、こちらの視線に気がついたのか、ガーゴイルの横にいたボスはニヤリと笑って親指を下にした。口パクで「行ってこい」とだけ読み取れた。
「ね、ねぇ、冗談ですよね?……ボス……ボス、ボーーース!!!!!」
悲しいことに叫びは届かず、ボタンが押され、機体は発射された。




