再生と過去の記憶
いつも急なことを言ってくるボスだが、この時に限っては凛とした姿はなく、ただただ急いでいるように感じた。
「ボス、どうした?」
「なんでもない、早くリリィをどうにかして見せろ」
「そうだな、わかった。何とかしてみる」
リリィの部屋(同居しているため鬼雨の部屋でもある)の前で話したので、当然であるが、リリィにも聞こえている。
聞こえているはずなのに、ドアの向こうから微かに聞きえる「死ね」と言う言葉だった。
「いやぁ……見られたくない……そ、そうだ! きっと鬼雨は、この髪が嫌なんだ……この髪さえ……髪さえ消えてくれれば! きっと私を捨ててくれない! 見捨ててくれない!」
自分の銀髪を見つめる。銀色はあの人と同じ血が流れている証拠。もう、それが嫌で嫌でたまらない。
だから、必死に貪った。痛いのを我慢して……。
引きちぎった。血が頭皮から溢れ出てくる。だが、その度に髪は再生し、生えてくる。
「抜けろ……抜けろ抜けろ抜けろ!!」
何度も何度も何度も……貪った。だが、それでも結果は変わらない。
「っはぁ……はぁ……なんで、なんでよ! なんでちぎっても生えてくるの!?」
髪は生えてくるが、流れている血は残っている。
「あぁ、そうか……ははは……もっと早くに気が付けたら良かった……。もう、疲れたよ…………私なんて」
――死んでしまえばいいんだ
私は首吊りとかの簡単な自殺では死ねない。だから、自分で自分を殺すしかない。道具などは使わずに。
右手にサイコキネシスを集中させた。
「死ねぇぇぇぇえ!!!!」
――直後、右手は左腕を切り落とした。
離れる左腕を確認した後、急に目眩が訪れた。
「上手くい……った」
そう確信した。世界が徐々に暗くなっていく。そして、昔に閉まったはずの記憶が鮮明に思い出してきた。
遠い遠い昔、物心つく頃には、私はそこにいた。
湧き出る血の泉。そして、無数のカプセルの中に培養液と共に入っている白髪で裸の人造人間。
彼らの首から管が通っおり、そこには血が通っている。そう、泉の血の正体は誰が無数に作った人造人間の血だ。
「……飽きた。お母さん、この血飽きたわ」
「なぁに? 愛しい我が子。彼らの血は美味しくないの?」
「ううん、そうじゃない。美味しいよ。ただ、毎日同じ血で飽きたの」
365日ずっと同じ血を飲まされてきた。その時、幼かった私の初めてのわがままだった。
「ねぇ、お母さん! 私、外に行ってみたい!」
「そうねぇ……いいわ! 行きましょ!」
「ほんとに!? やったー! ありがとう、お母さん!」
ニッコリと笑うお母さんはとても優しい顔をしていた。初めてのお出かけということで、小さなドレスをプレゼントしてくれた。
「うわぁ〜! 可愛い! ありがとう、お母さん!!」
「ふふ、さぁ、着替えて出かけましょ」
赤と黒の小さなドレス。運動用ではないが、裾が膝までしかないので走りやすい。靴も少しオシャレに黒の小さなハイヒール。
「私と同じで、銀髪がよく似合っているわ。リリィ」
「当然でしょ! なんだってお母さんの子供なんだから! さぁ、行きましょ♪」
お母さんがいつも出かける時に使うの扉に待機する。そして、お母さんの背中に跨り、おんぶして貰った。
「早く! 早く!!」
「そうはしゃぐと落ちるよぉ」
母であるローラ・バレンタイン・プリシアは大きな翼を広げて、リリィを連れて飛び立った。




