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秘密兵器

「はぁ、はぁ……参ったな。まさかここまで強いのか……」


「ふふふ、あなたも強いですわ。私の攻撃を受けて、生きているのですもの……ですが、これまでのようですわね」


 九尾はゆらゆらと揺らしている尻尾の先から1つの小さな狐火を作り出した。


「くそ……リリィ、逃げろ。俺はここまでだ……もう、立てない俺と違って、お前はまだ走れる。だから、逃げろ!」


「こんなところに連れてきて、今更逃げろとか言わないでよ! 鬼雨が死ぬなら私も死ぬ!」


 リリィは鬼雨の前に両手を広げて立った。いつもと違い、すごく立派で逞しく感じる。


「馬鹿! やめろ! 死ぬぞ!」


「立派ですわね。それでは今度こそ、さようなら」


 九尾の狐火がすごい勢いで近づいて来る。そして、死を覚悟して、目を瞑った。だが、死んでない。目を開けると狐火はリリィの目の前で止まっていた。


「これは……サイコキネシス? なんで、そんなものが……だったら、これでどうかしら〜」


「やばい!……鬼雨、ごめん!」


 突然振り向いたリリィのサイコキネシスによって浮かされて10mほど後方へと飛ばされた。


 直後、狐火が爆発した。


 範囲はそんなにはないが、狐火の炎はリリィを飲み込んだ。


「リ、リリィ!……おい、リリィ!!……リリィ……リリィ……嘘だろ?…嘘だよな?」


 自分の無茶で大事な人を殺した。山を消すほどの熱さだ。骨も残っていないのだろう。両手を地面につき、頭が下に行く。目から涙が溢れ出てきた。


 その時――


「敵を目の前にして、下を向いちゃダメだよ!」


 煙の中から、リリィが出てきた。


「ゴホッゴホッ……はぁ、はぁ……す、少し煙を吸っちゃった。それよりも前を向いて!」


「お、お前……なんで、生きているんだ!?」


「一瞬だけサイコキネシスを、はぁ、はぁ、自分にかけて、爆発から身を守ったの! そ、それよりもなにか倒す手はないの?……はぁ、はぁ」


 完全に防ぎ切ったわけではなく、あちこちに小さな火傷がかあり、服も少し破けている。

 鬼雨も血は止まり、多くの血を失ったが、なんとか歩ける動けるようにまでは回復した。


「……一つだけないこともないぞ」


「え? ほんと? だったら早くやってよ!」


「時間が必要なんだよ! あと、至近距離からじゃないと成功しない」


「はぁ………あと、1回。あと、1回だけしかあの狐火を止められない……くっそ……動いたね」


 コツコツと下駄の音を鳴らしながらこちらに向かってくる。風が吹き、爆発でできた煙は一気に消し去り、中から九尾が現れた。


「あらあら、こんなところにいましたのね。ここまで生き残り、頼まさせてくれたお礼ですわ。1発だけ私を殴ってもいいですわ」


「なら、お言葉に甘えるか……」


 ――イメージするんだ。


 ずっしりとした重み、引き金の掛かり具合、長さがそこそこあって、先端にはナイフが付いている銃を。


「なんとかできた……うっ…血が足りねぇな……くそ」


「これが……倒すための武器?」


「あぁ、まあ見とけ……なぁ、九尾。1発だけ撃っていいんだよな?」


 優雅にお酒を飲みながら、頷く。


「上等だ! 行くぞ!」


 バンッ!と音がした。あまりの反動で腕か上がり、目を瞑ったがすぐに開けると九尾の前で狐火が燃えて、消えた。見てみると当たった形跡はなかった。恐らく、狐火で燃やされた。


「ず、ずるい! 1発だけって言ったのに!」


 リリィが横から怒る。


「ほんとうにやるわけないですわ。敵の言葉を信じるなんて……興ざめですわね……今度こそ本当に殺しますわ」


 九尾は9つの狐火を尻尾で作り、また1つにしていく。


「もう、逃げられませんわね……ではでは……ふふふ」


 物凄い勢いで向かってきた。


「リリィ!」


「わかってるよ!」


 リリィは狐火を止めた。鬼雨はその瞬間に引き金を引いて、再び発砲した。


「ふふ、残念でしたわね」


 次は虚しくも尻尾の先端に当たっただけだった。

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