赤い瞳
「ふーん……そいつをどうすればいいんだ?」
「それについては後ほど言う。こちらで少し話さないといけない者がいる。……とにかく、中国に着いたら、まず、電話をしろ。まずはそこからだ」
言うだけ言って通話を切った。直後、鬼雨の元にリリィがやってきた。そこまでなら、まだよかった。問題は身なりにあった。
「鬼雨〜! 今のはボス〜?」
「あぁ、そうだ……それよらもなんだその格好は! なんでバスタオルしか巻いてないんだよ!」
相変わらずのきめ細やかな白い肌が、真っ白なバスタオルとよくあっている。それに、近づかなくてもわかるほどシャンプーの甘い香が匂ってくる。
鬼雨は健全な男子なのだ。ツッコミを入れつつも内心とかが色々とやばい。何度も同じことを繰り返しているのに、未だになれない。
「それはねぇ〜鬼雨が喜ぶかなぁ〜って♪」
「いいから服を着ろ!」
リリィを再び風呂場に行かせ着替えるように言いつける。その間、鬼雨はリリィの言葉が2、3度頭の中で繰り返す。そして、その度に恥ずかしくなって枕に顔をうずめる。
「ったく……ほんとにやばい……」
そんなことを考えている合間にリリィがホテルから支給される浴衣に着替えてきた。
バスタオルと同様、白が良く似合う。いつものツインテールは解かれ、ストレートになっている。
「いつものツインテールはどうしたんだ?」
「気合いを入れる任務のときはいつもこうなの」
リリィは髪をくるくると巻きながら話す。完全に乾いてないのか、少し湿っており何ともエロい。ついつい、目を離してしまう。
「それでね、鬼雨……お願いがあるの……」
「ん? なんだ?」
鬼雨が振り返ると、そこにいるはずのリリィがいない。
「ごめんね」
後からリリィの声がした。そして、声と同時になにかをぶつけたのか、強烈な痛みが走った。
鬼雨の意識が飛ぶ直前、確かに見た。リリィの右手が手刀の形になっていたのを……。そして、黄色いはずの目が赤いことを……。
「……ごめんね、鬼雨。まだ、あなたに秘密を知られたくないの……。じゃぁ、いただきます」
次の日の朝はすぐにやって来た。
「俺はいつの間に寝てたんだ?……というか、右腕が重い……まさか!」
鬼雨の予想は当たっていた。布団をどけると右腕を抱き枕代わりにしているリリィが寝ていた。
2つの果実が腕を挟んでいた。柔らかさが腕越しから伝わって来る。このままでいたいと思いつつもゆっくりと離す。
「なんで、いつもいつも入って来てんだよ……」
スゥースゥーと微かな寝息を立てている。唇から漏れる息に少し興奮してしまう。
「これは……やばいな。一旦、落ち着こう」
自分に言い聞かせて、心を落ち着かす。そして、着替えて朝食を食べているとリリィが来た。
「なんで、起こしてくれなかったの!」
「まぁ、そう怒るなよ。それよりもうすぐ出発だ」
「あー!! 食べる時間がなーい!」
リリィは急いでいるにも関わらず、またしても沢山食べてしまい、電車で行く予定が、結局、タクシーで行くはめになった。
なんとか空港に着くと、リリィは隣で死んでいる。
「なんで……なんでタクシー……」
「お前がアホみたいに食べるからだろ……」
「うぅ……気持ち悪い〜」
何とかしてあげたかったが、出発の時間がもう迫って来ていた。
「ほら、行くぞ!」
荷物検査を通り、飛行機に乗り込む。間もなくして、離陸した。
イタリアから中国まで、今から約12時間。その間をリリィの車酔いの回復に当てた。
「大丈夫か?」
「うぅ……まだ、治らない……」
離陸から10時間ほど時間を掛けて、リリィの車酔いを治した。そして、ほんの数分後に鬼雨は、相手の気配を感じた。
「おい、リリィ。奴がいる……わかる……中国に白夜叉がいるぞ!」
「え?それって──」
リリィが何かを言いかけたところで飛行機から煙が上がった。




