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「で、デート?」


「そう! せっかくの休日を楽しまなきゃ!」


「あぁ、そうしようか。金はボスが出してく──」


 ──ドックン──


  鬼雨の心音が1つだけ大きく聞こえた。それと同時に肩に違和感を覚える。体が熱くなるなるのがわかる。次の心音は更に大きく聞こえた。徐々に、徐々に大きくなっていく。


 ──ドックン、ドックン、ドックン──


  リリィはこの時ようやく気づいた。鬼雨の暴走に。つい、昨日もそうだったではないか……


「もしかして、鬼雨の暴走する条件って夜に血を吸うこと……?」


  鬼雨はあまりの辛さでしゃがみ込む。


「あぁぁぁぁ!!! 早く俺から離れろリリィ!」


  自分の暴走はあまりにも危険を晒しすぎる。もし、このまま自我を無くしてなってしまったら大変なじゃ済まされない。


「大丈夫だよ、鬼雨。すぐ終わるから……」


  目の前にいたはずのリリィが一瞬にして消えた。探そうとして、熱い体を起こそうとすると右から声がした。


「おやすみ、鬼雨」


  首に強烈な手刀が入り、鬼雨の意識は途絶えた。

 月が沈み太陽が登る。


  時刻は午前九時。ようやく鬼雨は目を覚ました。珍しく、体は重くない。


「あれ? リリィはどこだ?」


  辺りを探すと、どこにもいない。たぶん、リリィが用意したであろうテーブルに置いてある軍服を着て、出発しようとしたところでドアをノックする音が聞こえた。


「お客様。朝ごはんの準備が出来ております」


  流暢な日本語だった。いや、一流ホテルなら当たり前なのか?


  とにかく、鬼雨は行くことにした。廊下は広々としている。床は赤い絨毯が引かれており、靴を履いていてもわかるほどふわふわだ。


  3分ほど歩くと食事室が見えてきた。そこは縦横約30mほどある巨大な部屋だ。勿論、絨毯が引いておりふわふわだ。円テーブルがいくつもあり、とても綺麗だ。しかも、バイキング制になっており、色々な人が行き交っている。


「す、すげぇぇ」


  感心している中、1つだけ皿の量がおかしいテーブルがあった。まさかと思って向かうと案の定、リリィだった。何枚も皿を積んでおり、ほかの人が迷惑するレベルだ。リリィは鬼雨を見かけて話しかけるが何を言っているかわからない。


「先に口の中の物を飲み込んでから話せ!」


  慌てて口に入っているパンを指で押して飲み込んだ。食べ終わるとよほど美味しかったのか"ん〜"と喜ぶ。ついでに背中の翼が服越しからでもわかるほど揺れている。


「おはよう、鬼雨! デートしましよう!」


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