180.5# 受諾
原作四部、俗に聖竜国編と呼ばれるストーリー。
それは主人公アベルとその一行が、帝国の襲撃を退けた後の物語。
第一部|《魔王》ラースの復活、第二部|《第二の魔王》レイモンドの反逆、そして第三部|《人類最高の頭脳》テセウス率いる帝国軍の侵略——と、度重なる試練を超えたアベル一行の下に訪れた一時の安らぎ。
休む間も無い連戦続きで疲労していたアベル達の、僅かばかりの休息。
そんなアベル達の下に、聖竜国より一通の文が届く事から物語は始まる。
宛名は“王国の英雄一行”。
送り主は聖竜国の姫巫女タチアナ・アヴァロカンド。
内容は、聖竜国で年に一度開催される建国を祝う祭り——《竜王祭》への招待。
聖竜国では闘技場が名物とされており、度々闘技大会が開かれている。
《竜王祭》は、数ある闘技大会の中で最も大規模の大会であり、それに参加する為に国内外問わず、文字通り大陸中から強者が訪れる。
聖竜国に招かれたアベル一行は、そんな《竜王祭》という催しを貴賓席で楽しみ、その優勝者が英雄アベルに一騎打ちを挑むという一幕がありつつも物語は進む。
剣闘大会は《竜王祭》の前座に過ぎない。
《竜王祭》は聖竜国の建国を祝うものとは別に、ある儀式を行う場でもある。
儀式——それは代々の姫巫女が取り仕切る厄祓い。
《霊峰》に眠る荒ぶる竜王の御霊を讃え、鎮める為の祭——故に《竜王祭》。
聖竜国の姫巫女は、この《竜王祭》を行う為に存在する役職である。
姫巫女——即ち巫女。
巫女とは神託を受け、時にはその身に神を降ろす役目を持つ者の事。
原作において、《竜王祭》はある者により妨害され、《霊峰》に眠っていた荒ぶる竜王は目覚めた。
《邪竜》と称された不死身の黒竜。
《邪竜》はアベル一行とタチアナ率いる聖竜国軍の共闘でどうにか押さえ込む事に成功した。
しかし、相手は不死身。
殺す事ができない相手——《煉獄の魔王》スペルビア。
アベル達ですら、押さえ込む事が精一杯で倒す事ができなかった。
そしてこの不死身の《魔王》とかつて相まみえた地神と火神も、殺せず、滅ぼす事もできずに封印という道を選んだ。
地神はこれを、ローファスに対して完全に滅ぼして欲しいと言った。
千年もの間、代々の姫巫女が年に一度封印を重ね掛けし続けた。
力不足故に子孫に残してしまったこの禍根をどうにかして欲しいと。
子孫を縛る姫巫女の任から解放してやりたいと。
ともあれ、ローファスは《神》に至って間も無いひよっこ。
かつての六神が滅ぼす事を断念した《魔王》を滅ぼせという無茶振り。
不死身を殺し、尚且つ復活しないよう完全に滅ぼせなどという無理難題、しかしこれを成せば上位神格たる地神の全面協力を得られる。
ローファスは考えに考え、悩んだ末に結局滅ぼす方法は思い付かず、苦々しくも地神に返答する。
「《邪竜》を滅ぼす件……努力はしよう。だが確約は——むぐっ」
地神は笑い、ローファスに抱き付いた。




