消えたクラスメイト
翌朝、結は目を覚ました瞬間、昨日の夜のことが頭をよぎった。
日記に書かれた通りに花山が屋上で転んだこと。
そして、夜の図書館で見た、影のように黒い目をした花山の幻影。
「もしかして…本当に消えるの?」
不安を胸に、結は学校に向かった。
教室に入ると、クラスの空気が妙にざわついている。
花山の席が、空っぽになっていた――。
「花山、来てないの…?」
友人たちが口々に言う。だが、誰も理由を知らない様子だ。結の胸の中で、恐怖がじわりと広がった。
放課後、結は決心して図書館に向かう。
日記には「影の部屋」という言葉が繰り返し書かれていた。
夜の図書館に入ると、階段は昨日よりも不気味に光って見える。
足を踏み入れた瞬間、書架の影がうごめき、低い囁き声が聞こえた。
「……誰かいるの?」
迷路のような書架の間を進むと、やがて小さな部屋に辿り着いた。
そこには、昨夜見た花山の影が立っている。
無表情のまま、結をじっと見つめる。
手を伸ばそうとしたその瞬間、花山の体はふっと空気のように消えた。
「花山……!」
日記を開くと、次のページには別のクラスメイトの名前が浮かび上がった。
黒く滲む文字で、こう書かれている。
――次は、君の番だ。
背筋が凍る結。目の前に広がる闇は、ただの図書館ではなく、何かが生きて動く迷宮のようだった。
その迷宮の中で、消えたクラスメイトたちは囚われ、影のような存在になっていた。
そして、日記は結にだけ未来を告げる。
「どうして私だけ…?」
恐怖と孤独が結を包む。だが同時に、好奇心が小さく胸の奥で燃えた。
もし、この謎を解けば、クラスメイトを救える――。
結は深呼吸をすると、迷路の奥へと一歩踏み出した。
その背後で、かすかな階段のきしむ音が聞こえた。
影の部屋は、今日も誰かを待っている――。




