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田中英夫の観察日記~病んでるイケメン友人とその日常~  作者: 柑橘眼鏡


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19/20

19 2冊目 p.10

7月20日(火)

 今日は加藤さん、否、葵ちゃんと一緒に登校した。さっそく井下に見られたので、「そういうことです」と返しておいた。


 名前呼びは昨日の通話から。彼女の方から名前で呼びたいという有難い申し出があった。昨日は祝日で、直接名前を呼んだのは今日が初めてだったので、凄い照れた。でも、嬉しい。呼ぶのも、呼ばれるのも。


 どたばたですっかり忘れていたが、今週で学校も終わり。岡田は夏の予定を考えるのに忙しいようで、俺の惚気は華麗にスルーしやがった。めげないぞ、俺は。


 相変わらず立花さんで頭がいっぱいの岡田は、その執着心の強さを今日も垣間見せていた。


「一ヵ月記念日に、ペアリングを贈ろうと思うんだ」


「……重くないか?」


「重いと思うのはいきなりプレゼントするからだよ。段階を経て渡せば問題ない」


「そ、そうか。……きっとお前のことだから、キツいサイズの指輪でも渡すんだろうな」


「ああ、それも考えたけど、自分の意志でずっとつけてもらいたいんだよね。ほら、今は丁度夏で、ずっとつけていれば日焼けの跡が出来るから、それで確認できる」


「立花さん、日焼け止め塗ると思うけど……」


「塗っていても指先は落ちやすいからね。仮に遥の跡が分かりにくくても、俺がずっとつけていたことは証明できる。……夏っていいな」


「お、おう……」


 と、まあ、恍惚とした表情でそんなことを言っていた。夏が良いのは賛同するけど、動機はどうかしていると思う。


 岡田の観察日記として始めたこの日記。岡田の腹黒い行動から、挙動不審になるところまで色々と記録することができた。1冊目を紛失したのは惜しかったが、捨てられたものは仕方ない。2冊目だけでも読みごたえがあると思う。個人的なハイライトは狩野さんだな。


 終盤、俺の恋物語になってしまったが、何だかんだで両者ともハッピーエンドを迎えたので良しとしよう。……岡田のは外堀を埋めて強制的に迎えたような感じなのは置いておく。


 とにかく、いい区切りがついたわけだ。なので、いったんこの日記は終わりにしようと思う。書く暇があったら、葵ちゃんに向き合いたいし、岡田が思わず反応を返すような惚気になる思い出を葵ちゃんに贈りたい。


 これから始まる夏休みがこの日記以上のドラマティックで素敵なものになりますように。いや、するぞ! 頑張れ、俺!

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