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田中英夫の観察日記~病んでるイケメン友人とその日常~  作者: 柑橘眼鏡


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17 2冊目 p.8

7月14日(水)

 衝撃的な展開を迎えた! 岡田と立花さんがお付き合いすることになった!


 今日はテスト順位が貼りだされる日で、俺と岡田は前回と同様に二人で見に行くことにした。すると、先に立花さんと加藤さんが掲示板の前にいて、結果を確認していた。


 俺らも後ろから確認をする。1位は相変わらず岡田。で、立花さんはというと、なんと珍しく11位。加藤さんは8位だった。ついでに、安田の名前は消えていた。狩野さんにテスト勉強を妨害されたのだろうか……。


 確認が終わり、加藤さんの傍へ行って会話でもしようかと俺が悩んでいると、岡田は遠慮なく立花さんのところへ向かっていった。自分に近づく岡田に気づいた立花さんは、なんと、その場から走って逃げて行く。ここ数日、立花さんと満足のいくコミュニケーションが取れず限界を迎えている岡田は、逃がすまいと追いかけていった。俺も思わずついていく。……廊下を走っちゃいけないという事実は、ひとまず置いておく。


 立花さんよりも岡田の方が断然足が速いし、歩幅も長いのですぐに岡田は追いついて立花さんの右手を掴んだ。遠めだったけど、あれは相当の握力で握っていたね。


「立花さん! ねえ、どうして俺から逃げるの?」


 岡田の手を振りほどけない立花さんは諦めたのか、その場で足を止めた。顔は前を向いたままで、岡田の方には向けていない。


「俺、何かした? どうして立花さんに避けられているのか、分からない。仲良くやれていたと思っていたのに。俺の家に来た時からだよね。何か俺に問題があるのなら、俺、直すから。嫌な思いさせないから。それとも、俺のこと嫌いに――――」


「違うの!」


 第三者から見ると気持ち悪い長文を早口で喋る岡田。止めたのは立花さんで、振り向いた顔は物凄い赤かった。


「こんな気持ち、初めてで……! 岡田くんの家に行った時、葵と岡田くんが楽しそうに二人で会話してるのみてたら、なんか、凄く辛くなって。大事な友達の葵に対して、ずるいって思う自分が情けなくて、こんな自分を岡田くんに、知られたくなくて。岡田くんのことがが嫌いになったわけじゃなくて、むしろ、私は岡田くんのことが好きで…………あっ」


 思いの丈をぶつけていく立花さんは、最後衝撃的な言葉を漏らした。俺、茫然。岡田は硬直。立花さんも言う気がなかったようで、目が泳いでいた。


 しばしの間が襲う。壊したのは岡田だった。


「立花さん、本当……? もしそうなら俺、凄く嬉しい。俺も、立花さんのことが好き」


「う、嘘……」


 目を大きくさせながら驚く立花さんを前に、岡田が姿勢を正す。


「立花さん、ずっと前から好きでした。俺と付き合ってください」


 俺の角度からは岡田の顔は見えなかったが、凄い甘い顔をしていたに違いない。


「……お願いしますっ」


 立花さんが前向きな回答を返す。そして二人の甘い雰囲気は増していき……、俺は流石にその場を去った。静かにばれないようにね。たぶん、二人とも俺がいたことに気づいていないと思う。


 よかったよかったと思いながら教室に戻るため廊下を歩いていると加藤さんとすれ違う。無事に二人はお付き合いする運びになったことをご報告。そして、俺は――――。


「今度、空いてる日に一緒にパンケーキ食べに行かない? ほら、4人だと暫く無理そうだしさ」


 言い訳がダサかったのは自覚している。けど、ちゃんと誘えた! 褒めてほしい!


 俺のお誘いを加藤さんは笑顔で快諾してくれた。そして、金曜日の放課後に二人で行くことになった。明後日だよ、明後日! 俺、どうしよう。


 ドキドキが止まらない、と思っていたら岡田から長文のメッセージが入った。スンッと気持ちが落ち着く。


 立花さんと晴れて結ばれた岡田は、嬉しさが止まらないようだ。面倒なので「俺に裂く時間があるなら通話でもしたら」と返信したところ、既読がついてそのままになった。……いいなぁ。


 そうそう、書き忘れていたけど、貼り出された順位表に俺の名前はなかった。無念。

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