16 2冊目 p.7
7月12日(月)
寝たら大抵のことをリセットできる俺。土日は元気だったが、今日は疲れてしまった。テストの結果は悪くないんだけどさ。
岡田がどうして加藤さんと二人で話していたのか、気になって仕方がなかったので、ホームルームの前にストレートに聞いてみた。返ってきたのは予想の範囲内で、立花さんのことを相談していたらしい。加藤さんにも分からないようだ。
ストレートに聞きすぎたせいで、思わぬ反撃を岡田から受けた。
「ヒデは加藤さんのことが好きなの?」
即答できなかったし、時間がかかったくせに返せた言葉は「分からない」と、まあ情けないったらありゃしない。
「そう答えている時点で好きだと思うんだけど」
容赦のない追撃にどう返せばいいかと思案しているとホームルームが始まって、会話は有耶無耶になった。
もし、仮に、俺が加藤さんのことを好きだったとして、その先に一体何があるんだろう。別に、気持ちを伝えなくても、今まで通り楽しく遊べていれば、それで十分だと思うんだ。
……逃げの姿勢だよな。俺が岡田みたいに顔が整っていて、世間からの評価も高い男だったら、攻めの姿勢になれたのだろうか。
7月13日(火)
恋愛ソングのプレイリストばかり聞いてしまう。どうしたんだ、俺。でも、曲を聞けば聞くほど、加藤さんと二人で色々なイベントを楽しみたくなるし、一緒の時間をもっと増やして思い出を作りたくなる。
実際、作りたい。この関係をもっと発展させたい。
そう思えるようになったのは、今日の昼休みに岡田からありがたい言葉を頂戴したからだった。
「仮の話だけど、加藤さんに恋人が出来たとする。それで、そのことを祝福できるのならそのままでいいけど、無理なら行動に移した方が良いと思うよ?」
加藤さんに恋人。想像しただけで、絶望的な気持ちになった。
「……できない、と思う。でも、俺、自信ないよ。俺なんかが、告白して上手くいくかな」
正直に答えたら、俺の余計な口は不安までも正直に口にしてしまった。
俺の情けない発言を岡田は馬鹿にせず、その代わりに俺を真っすぐ見つめ、俺の名を呼んだ。
「ヒデ、過剰な自信もどうかと思うけど、その自信のなさもどうかと思うよ。ヒデは面倒見がいいし、困っている人がいたら助ける姿勢はかっこいいよ。実際に、痴漢の被害に遭った女子高生を助けてるし。最初はどっちでもよかったんだけど、ヒデの気持ちが固まっているなら俺は気持ちを伝えるべきだと思う。ヒデのことをどう思うかは、ヒデじゃなくて加藤さんが判断することだしさ」
岡田のいつにない真面目な言葉は俺の背中を押すのに十分だった。岡田は岡田で、立花さんと会話が上手くできずに余裕がないのにな。ありがとう、岡田。
あとは、その、どのタイミングで気持ちを伝えるかで。うーん、とりあえず夏休みに入る前ぐらいでいいかな。……この姿勢じゃ、ダメだよなぁ。




