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田中英夫の観察日記~病んでるイケメン友人とその日常~  作者: 柑橘眼鏡


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13/20

13 2冊目 p.4

6月28日(月)

 衝撃的な展開を迎えた。例の男、安田に彼女が出来たのだ! もちろん、立花さんじゃない。お相手はあの狩野さんだ!


 土日の睡眠で様々な気持ちを落ち着かせた俺は、いつも通りの時間に教室にたどり着き、机にカバンを置いた。すると、一息つく間もなく、主張が強い声が教室中に響き渡った――――。


「健くんはぁ、私のピだからぁ、手を出しちゃ駄目だよぉ」


 超甘ったるい声と共に入ってきたのは狩野さんとその友人。この間の冷たい発言とは真逆の声色に、俺はギョッとして振り向いた。


 狩野さんはクラス中の視線を集めながら、自身の席を通り過ぎて、岡田の所まで歩いていく。


「岡田くん、ありがとね」


「こちらこそありがとう。お幸せに」


 周りは一体何のことか分からず首を傾げていたが、俺はすぐさまピンと来たね。3日で方を付けるっていうのは、狩野さんが安田氏を落とすまでの時間ということか! というか、凄いな! 本当に落として!


 急いで駆け寄る俺を迎えたのは美しい笑みを浮かべた岡田だ。


「樹、これって……!」


「そういうこと。ほら、狩野さん、前に社会人の彼氏の経済状況に悩んでいたでしょ? だから、近くに良い人がいるよって教えたんだ。それだけ」


 それだけ、じゃないでしょうよ! いや、岡田はそれだけかもしれないけどさ!


 狩野さんに詳しい話を聞きたいような、聞きたくないような。男を3日で落とすってどんな魔法を使ったんだよ……。加藤さんのメッセージみたいな感じなのかな。いや、加藤さんに関しては何も考えていないかもしれないけどさ。


 そうそう、気がつけば、早いものでテスト一週間前。落ち着いた岡田がパンケーキで作ったグループに「一緒に勉強しない?」とメッセージを入れていた。


 近いうち、皆で一緒に勉強をすることになると思う。俺、加藤さんにどう接すればいいんだろう。




6月29日(火)

 テスト範囲を終えているため、数学は自習だった。前回は体調不良とはいえ、この先生、自習好きだよな。


 そんなこんなで、久しぶりに「最近の素晴らしかった立花さん」の話を岡田から聞いた。穏やかな岡田から、穏やかな話が聞けて俺は少しだけ感動してしまった。このまま穏やかでいて欲しい、お願いだから。


 狩野さんは相変わらず大きな声でクラス中に自分の彼氏の話を聞かせていた。


「ほんとに優しくてぇ、毎日勉強教えてくれることになったのぉ。テスト終わったらご褒美にフルーツビュッフェに連れてってもらうんだぁ」


 うーん、相変わらず甘ったるい声だ。皆、ドン引いていたが、前回より可愛げのある発言なので、クラスの温度が冷えることはなかった。


 それはそうと明日、岡田の家で4人集まって勉強会を開くことになった。


 俺は加藤さんから英語を教えてもらおうと思っているんだが、どぎまぎせずに接することができるだろうか。それだけが心配。


 今回のテスト、岡田から数学と生物の過去問をもらっているので、実は強気だったりする。一桁は無理でも、貼り出される可能性はあるのでは……? なんて期待しちゃうけど、ズルだし、他の科目が足を引っ張ること間違いなしなので、望みは薄い。

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