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田中英夫の観察日記~病んでるイケメン友人とその日常~  作者: 柑橘眼鏡


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10/20

10 2冊目 p.1

6月16日(水)

 数学の課題も終わり、「さあ書こう」と思ったらノートが消えていた。


 やられた。ゴミと一緒に捨てられた可能性が高い。というか、母上、燃えるごみではなく資源ごみのように思えるんですけど……。


 抗議したい気持ちでいっぱいだが、「俺の日記捨てただろ!」なんて恥ずかしくて言えないので、泣く泣く新しいノートを用意した。気持ちを切り替えて今後も書き続けよう。


 それにしてもこの日記、岡田のことよりも俺の個人的なことが増えてきたな。


 うーん、今日は俺の家でゲームしたぐらいで特に立花さんの話は出なかったし、二人が連絡先交換してからあんまり面白い話はない。


 平和なのが一番だけど、この日記としてはつまらないよなー。




6月17日(木)

 放課後予定もないし、詳しく立花さんのことを聞こうかと思ったら、どうやら岡田は予定があるみたいで、ホームルームが終わるとすぐに教室を出て行った。


 立花さん関連かと聞くと「秘密」とはぐらかされてしまった。今更、俺に隠すことなんてないだろ。


 そうそう、今日はプール掃除で女子に水をかけていた男たちが職員室に呼び出されていたのを目撃した。彼らは生徒指導担当の教師に凄い勢いで怒られていた。


 ひそひそと女子たちの囁き声が聞こえてきたが、それによると彼らはプール掃除以外にも女子生徒に品のないことを散々やってきたらしく、それが明るみになったようだ。


 いい気味だ。反省しろ。加藤さんに危害を加えた罪は重いぞ。




6月18日(金)

 岡田に昨日目撃したスカっとする話を提供したら、驚くべき、否、ドン引きしたくなる反応が返ってきた。


「ああ、そう。上手くいったみたいでよかった」


「……樹、お前、何かしたのか?」


「もちろん、当然だよ。立花さんに迷惑をかけた奴なんて、また何をしでかすか分からないからね。各クラスの知人に色々と話を聞いたらすぐにあいつらの情報が集まったんだ。俺が言っても変だから、うちのクラスの風紀委員にまとめてその情報を教えてあげたんだよ」


「お前が黒幕か」


「黒幕だなんて人聞きが悪い。正義の味方って言ってほしいね」


 胡散臭い顔で笑う岡田を俺は無視してやった。怖えよ!


 震えていると、風紀委員がお礼を言いに岡田のところへやってきた。良いことをしているはずなのに、なんでこんなに怖いんだ……。




6月19日(土)

 土曜日だというのに筆を執った理由はただ一つ。岡田から迷惑極まりない長文の連絡が入った。


 長すぎて書き起こしたくないけど、一言でまとめると偶然立花さんと街でばったり会ったらしい。……本当に偶然か?


 立花さんは閉店セールに行く予定だったようで、岡田は上手いこと言って同行し、一緒にショッピングをしたようだ。


 立花さんの好みを知れて良かった、と大量の文章で送られてきた。花柄やレース、淡いパステルカラーが好きで、私服はちょっと甘めなコーデだった、などなど。俺にその情報は不要なんだが……。


 さりげなく買うのを悩んでいたイヤリングをプレゼントしたら大層喜んでくれたと岡田はご機嫌だ。このままご機嫌でいてくれ。

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