第9章―13
さて、このような謀略を英国が実施することを決めた背景の一つだが、日本海兵師団の存在があった。
それこそドイツのシーパワーからして、複数の装甲師団を海上輸送してノルウェーに侵攻する等、完全に手に余るのは、自明の理だった。
(実際、史実でもノルウェー侵攻作戦に投じられたドイツ陸軍の第一陣の兵力は全てを併せても1万人余りであり、完全編制された歩兵1個師団にも及ばない兵力だったのだ。
そう言った現実からして、日本海兵師団1個がノルウェーに赴けば、という考えが英国政府、軍内部で起きて、日仏政府、軍内部も賛同するのも、おかしくないことだった。
尚、言うまでも無いことだが、史実のノルウェー侵攻作戦において、第一陣のドイツ陸軍兵力が、ノルウェーの港を制圧して、その上で兵員等を輸送することにより、ドイツ軍の兵力は増強されている。
だが、ノルウェーの港を速やかに制圧できない状況ならば、ドイツ軍がノルウェーに侵攻しても、その侵攻作戦が失敗に終わることは、史実の順序を完全無視する話だが、史実のノルマンディー上陸作戦において、人工港のマルベリーの建設が失敗し、上陸部隊への補給困難等を引き起こしてしまうのと同様の事態を引き起こすことになる、と言っても過言ではないことだった)
その一方、日本海兵師団は敵前上陸等の訓練を積み重ねており、ノルウェーに派遣された場合、十二分に役立つことになると期待されていた。
そうしたことから、(史実より2月も前倒しして)ノルウェーの領海内への機雷敷設という謀略等を、英国は断行する事態が起きることになったのだ。
尚、余談に近いことになるが。
(この世界では)アルトマルク号は、古賀峯一中将率いる日本の間接護衛艦隊の索敵行動によって、北大西洋で捕捉されることになった。
そして、日本海軍によって、臨検拿捕されることになり、アルトマルク号に乗っていた英国人捕虜が解放されるという事態を引き起こし、日英間の友好を深めることになった。
だが、こうしたことは、当然のことながら、ドイツ側にもそれに対応する行動を引き起こすのは当然のことだった。
それこそ蛇の路は蛇、と言う言葉があるように。
様々な謀略を行ってきたドイツにしてみれば、英国がノルウェーに対して謀略を行う事態を想定するのが当然のことだったのだ。
そして、ドイツ海軍の戦力が、英海軍単独にも劣る中で、仏海軍や日本海軍が英海軍に協力しているという現状があっては。
先にノルウェーを英仏日に制されては、ドイツの行く末に深刻な事態が起きかねない。
それを避けるとなると、先にノルウェーをドイツが制圧すべきだ、と言う考えをヒトラー総統以下のドイツ政府、軍が持つのは当然に近いことだった。
ともかく、こうしたことから(史実よりも2か月程先んじて)ドイツに因るノルウェー侵攻作戦が、急きょ発動される事態が引き起こされることになった。
日本がわざわざ海兵師団を英本土に送り込んできたのは、英仏日に因ってノルウェーを制圧しようとしているからだ。
更に言えば、ノルウェーの軍事力からすれば、英仏日の軍事圧力に従わざるを得ないだろう。
それを避けるならば。
ドイツ政府は、
「同じゲルマン民族であるノルウェーの国民を、黄色人種である日本の脅威から守る必要がある」
という大義名分を掲げて、第二次世界大戦勃発早々に、ポーランド東部に進駐したソ連と同様の理屈で、ノルウェーへ平和裏に軍隊を進駐させようとすることになったが。
そんな理屈をノルウェー政府が受け入れる筈が無かった。
こうした背景事情から、ノルウェーの国民は大国の思惑に翻弄される小国の悲哀を、この後でつぶさに味わう事態が引き起こされた。
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