表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

87/355

第9章―6

 さて、先に義妹、許嫁の藤子からの手紙を受け取った米内仁の反応を描くならば。


 実母の久子の行動に、仁は文字通りに呆れかえる羽目になった。


 それこそ年末年始の帰省の際に、それなりに母子で色々と顔を合わせて話をしてはいたが。

 久子は、日本で女性の補助部隊を陸海軍が編制することになった際、自分が志願するとは、仁には一言も言わずにいたのだ。

 更に言えば、藤子や他の子どもにも、久子は直前まで黙っていた。


(この辺り、米内洋六少佐が、妻の久子との会話の内容、久子が女性の補助部隊に志願するつもりだ、との内容を、子ども達に告げていれば良かったのかもしれないが。


 米内少佐にしてみれば、子ども達に伝えても、ようやく乳離れしたばかりの子がいる久子が、自分達を事実上は捨てて欧州に赴く等、どう考えても信じられないことだ、と達観してしまったのがあった。

 実際、普通に考える程、久子が欧州に赴く等、子ども達にしてみればアリエナイことだったのだ)


 そして、藤子からの手紙を受け取った仁は、慌てて母の久子を諫める手紙を書いて送ると共に、何とか海軍兵学校を休んで、実家の横須賀に赴いて、直に母を説得しようとも考えたが。

 それこそ戦時中であり、海兵隊が先陣を切って、陸海軍が日本から欧州へと赴こうとしている時期である。

 更に言えば、それこそ国策で、女性の補助部隊志願者を募ってもいるのだ。


 こうした時期に、幾ら実母とはいえ、女性の補助部隊に志願するな、と説得する為という理由で横須賀にまで自分が赴けるか、というと。

 仁は、母にしてやられた、と臍を噛むしかない事態だった。


 そして、肝心かなめといえる米内少佐は欧州に赴く途中で、娘の藤子からの手紙を受け取るのは、結果的にだが、3月以降になるのは避けられないことだった。


 だから、その間に久子の女性補助部隊への志願は、順調に進むことになってしまった。


 藤子は、最後の頼みの綱として、自分からすれば、父方祖父母の米内少佐の両親や、義理の父方祖父母になる久子の実両親に、久子の女性補助部隊への志願を止めるように、久子を説得してもらおうとまでも考えて、行動したのだが。


 米内少佐の両親と久子は、米内少佐の兄の正一が病死した際などの行きがかりから、微妙な関係に完全になっている。

 更に久子の実両親にしても、これまでの様々な行きがかりから、久子をこの件で説得することについては、微妙に腰が引けてしまった。


 そうしたことから、米内少佐の両親に至っては、わざわざ横須賀にまで来て、久子を説得しようとしたのだが、久子はその説得に完全に耳を貸さない有様で、結局は自らの意思を押し通してしまった。


 そんなこんなのことが積み重なった末に。


「それでは、海軍の女性補助部隊の一員として、私は出征します」

と久子は出征を見送る人たちに敬礼しながら宣言して。

「米内久子、万歳、万歳」

と近隣の住民から歓呼の声を浴びて、出征することに久子はなった。


 藤子は、まだ幼いと言える身ながら、その光景を思い切り斜めに見ざるを得なかった。

 近隣住民にしても、

「御国の為に出征します」

という女性を批判すること等、出来よう筈がない。

「御国の為に」

というのは絶対の正義なのだから。


 だから、久子が子どもを捨てるようなことをしつつ、女性の補助部隊に志願する、というのを、近隣の住民は挙って称賛する、と言う事態が起きている。

 こんな光景が、徐々に広まっていっては、女性の補助部隊志願者は、増える一方になるだろう。


 更に言えば、自らの遠縁の米内首相は、これを歓迎するだろう。

 少しでも多くの女性を、補助部隊に志願させたい、というのが米内首相の考えなのだ。

 藤子は、溜息を吐くしか無かった。

 藤子が余りにも大人びている、と言われそうですが。

 これまでの様々な経緯から、藤子は大人びざるを得なかった、ということでお願いします。

(何しろ出生から色々あった末に米内洋六家の一員になり、更にその後でも、単なる継子から長男の嫁になる等、様々な紆余曲折が藤子にはあったのです)


 ご感想等をお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
久子さん、欧州派遣で名前も売って軍務という花と実を得つつ戦後に国会議員になりそうな勢いですね。バックの方は在郷軍人会とか婦人会あたりがもっていくでしょうし。でも娘の藤子さんは反発して別の道にとかやりそ…
悋気と私情と煩悩を、見事に愛国の至誠に昇華だが偽装だかした久子さん、見事。 良かれ悪しかれ、山家先生の書かれる女性は、自分の意思を持っているというか、能動的で良いですね。 まだ緒戦なんで、横須賀という…
藤子ちゃん、そらまあ無理にでも大人になるしかないわな… 誰が一番悪いかを突き詰めて行くと転生カナリス提督に行き着くのでカナリス提督はそのお命で責任をとってもらいましょう(理不尽)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ