第8章―7
とはいえ、余りにもカテリーナ・メンデスの考えは、先走り過ぎにも程がある、と自分としては考えていたのだが。
この場に居る面々の会話を考えれば、どうにも否定できない気がする。
自分としては、新しく常設となった海兵隊の初陣の舞台は、恐らく香港、そうでなければ東南アジアか、遠くともインド亜大陸では、と漠然と日中戦争終結直後は考えていたのだが。
このまま行けば、日本から海兵隊を始めとして、様々な部隊が欧州まで派遣されるのもあり得る気が。
又、ユダヤ人部隊が、英国の下で編制されることも、本当にあり得る気がしてならない。
そんなことを米内洋六少佐が考えていると、都合をつけて、この場に集った淵田美津雄少佐と源田實少佐の会話が、耳に入って来た。
「実際問題として、電波探信儀(レーダー)を空母に搭載することになったようだが、実用に耐えそうなのか。更に言えば、将来的には、それによって艦隊の防空を行う戦闘機を誘導等するようなことまでも、考えているようだが、そんなことが可能なのか」
「現実の話をすると、電波探信儀を搭載したが、まだ色々と調整中と言って良い。陸上では問題無く作動するようになりつつあるが、実際に軍艦に搭載してみると、色々と問題が起きがちだ」
「その解消には、どれくらい掛かりそうなのだ」
「どうのこうの言っても、英国を中心に様々な援助があるからな。何とか年内には、電波探信儀の安定作動が見込めるようになると考えている。とはいえ、更に戦闘機の誘導等になると、来年の夏以降になるだろうな。その更に先には、それこそ電波探信儀と連動して、対空射撃が行われる等までのことが期待されている訳だが。そうなってくると、早くとも再来年の話になりそうだ」
「そうか。龍驤の悲劇(表向きは中国国民党空軍による、実際にはドイツ空軍から派遣された軍人による空襲によって、龍驤は撃沈された)を二度と起こさないようにしたい、という路は遥かなようだな」
二人の会話は、微妙なモノになっていた。
米内少佐は、その話を聞きながら、考え込んだ。
電波探信儀の研究だが、空母龍驤の沈没と、空母加賀の大破によって、日本海軍内部において急速に進むことになった。
それ以前から、日本陸海軍内では、電波探信儀等の研究が行われていなかった訳ではないが。
それこそ「闇夜の提灯」論等が主張されて、電波を発することは、逆に敵に存在を知らせることになるから、電波探信儀は不要だ等の主張が、それなりどころでは無く、強かったのが現実だった。
だが、龍驤の沈没と加賀の大破は、そういった声を吹き飛ばした。
少しでも早く、確実に敵機の来襲等を把握するとなると、電波探信儀は必要不可欠である、と日本陸海軍内では考えられるようになった。
本来的には、このことは陸軍にまで響く代物では無かったが、ソ連空軍が様々に質量共に強化されつつある現状に鑑みて、陸軍内でも帝都を中心とする日本の防空体制拡充を検討していたこと。
更には、英国が本国防空の為に電波探信儀網の構築を、(後世から見れば、初歩的に過ぎない段階に止まってはいるが)完成したと言っても良い状況にあることが伝わったこと。
その二つのことが、陸軍内でも電波探信儀等の開発研究に励む事態を引き起こしたのだ。
そう自分は聞いていて、その背景事情に、そう間違いは無い筈だ。
だが、電波探信儀が実戦で活躍するとなると、もう少し先のことになるのは、どうにもならないようだな。
更に言えば、やっと空母が電波探信儀を装備したばかりでは。
戦艦や主な巡洋艦等にまで、電波探信儀が装備されるとなると、平時の今では数年先になるだろう。
そんなことが、米内少佐の脳内では過ぎった。
どうのこうの言っても、この世界の日本は日中戦争が終結したことから、平時体制に戻っています。
そうしたことから、電波探信儀の研究ならともかく、量産して装備するとなると、予算等の問題から進まないのです。
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