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第8章―6

 少なからず場面が変わります。

 そんな感じで航空戦力の拡充についても、陸海軍は協調して行おうという状況に陥りながら、1939年8月を迎えていた。


 そして、欧州情勢がきな臭くなってきたことも相まって、海兵52期の有志は、横須賀の料亭「小松」に8月冒頭の休日を利用して集っていた。


「ドイツの暴走で、欧州大戦が起きて、我々も欧州に赴くことになるのかな」

「そういう噂が流れつつあるな。色々な筋からな」

 乾杯した後、同期の面々は思い思いに話を始めた。


 本来ならば芸者を揚げて、という話になるのかもしれないが、話す内容が内容だ。

 それに未だに引き摺っているのか、と言われそうだが、芸者との間に子どもをつくって問題を引き起こした米内洋六少佐も、この会に出席していては。

 そうしたことから、芸者抜きで海軍軍人のみが集う状況に、この会はあった。


「しかし、本当にドイツは、更なる暴走を行うだろうか」

「これ以上の領土拡大となると、ポーランド侵攻と言うことになりかねないぞ」

「ポーランドは、それなりどころではない大国だ。英仏と挟撃すれば、ドイツと言えど苦戦程度は済まず、文字通りに亡国と言う事態が起きかねない」

 会の参加者は、想いに想いに会話を交わしだした。


 その会話を聞きながら、米内少佐は考えた。

 実際のところは、どうなのだろうか。


 先日、四方山話をしたカテリーナ・メンデスは、自分に意味深なことを言った。

「英がユダヤ人部隊を編制しようと考えているようですよ。文字通りに世界からユダヤ人を集めてでも」

「そうなのか」

「ええ、その見返りとして(イギリス領)パレスチナの永住権を、志願者には与えるとか。勿論、俸給等にも見返りがありますが、最大の目玉は、その永住権ですね」

「成程、戦争が終わったら、パレスチナに住めますよ、という見返りか。シオニストにしてみれば、垂涎の話だな。何しろパレスチナへのユダヤ人入植は、アラブ系パレスチナ人との軋轢が激化するとして、人数制限が行われているのが現実だ。だから、パレスチナの永住権を認めると言うのは、諸刃の刃の筈だが、欧州大戦が起きた際には、そんな戦後の大問題等、後になって考えればよい、という訳だな」


 米内少佐はシニカルに言ったが、カテリーナとしては、更に考えることがあるようだった。

「でも、その背後には日本政府の意向もあるような気が、私はしてなりません」

 カテリーナは、憂いに沈んだ表情を浮かべて言った。


「幾ら何でも考え過ぎだろう」

「そう考えられれば良いのですが。私としては、日本政府の本音が気になって仕方ありません。本音ではユダヤ人を日本国内から追い出したいのでは」

 米内少佐の言葉に、カテリーナは言い募った。


「確かに、完全には否定しづらいな」

 米内少佐にしても、カテリーナの言葉は否定しづらかった。


 様々な要因から、ドイツ等の中東欧から日本を目指すユダヤ人が増えつつある。

 そして、日中戦争の敗北に伴う様々な事情から、(細かいことを言えば、表向きに近いが)ユダヤ資本を、日本は積極的に受け入れることで、日本経済の立て直しを図り、又、陸海軍の再建を図っている。

 だが、これはこれで、国粋派の面々からすれば気に食わないことで、国民の間の外国人嫌いを煽って、ユダヤ人を日本国外に追い出そうとする動きが強まりつつあるのだ。


 更に言えば、独のファシズムやソ連のコミュニズムに対抗して米英等に寄り添う姿勢を示す為に、民本主義を標榜している日本政府としては、国民の輿論を無視することはできない。

 

 だから、自分の遠縁の米内首相率いる日本政府が、ユダヤ人が穏便に日本から出ていくことを望んでいることを、自分も察せざるを得ない。

 米内少佐はやり切れない思いを抱いた。

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― 新着の感想 ―
 今回の話でイギリス安定の二枚舌は伝統芸なのでしゃーないと諦観しちゃうけどシャイロック以上に狡猾なブリカス仕草(明らかに空手形)に嬉々として乗ってしまうユダヤの無邪気さにも『なんだかなぁ』とうめいてし…
>その見返りとして(イギリス領)パレスチナの永住権を、志願者には与えるとか。 流石、ブリカス。空手形または不動産の二重売詐欺www。大日本帝国も見倣った方が良いと思いますよ。例えば、台湾・朝鮮にも帝…
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