第8章―5
そんなこんなの話が、この頃の日本陸海軍では転がるのだが。
その一方で、日本陸海軍が軍用機の共用化等を進められた最大の背景として挙げられるのが、日中戦争の敗北の結果、(メタい話になるが、この世界では)日本陸海軍の第一の主敵がソ連、第二の主敵が中国国民党政府、と固まったということがあった。
(この世界の)日中戦争で敗北するまで、日本海軍は米国を最大の仮想敵国として考えて、その為の海軍戦備の充実を日露戦争終結以来、ずっと日本政府等に訴え続けてきたと言っても、あながち間違いでは無かったのが現実だった。
更に言えば、その自らの訴えに自縄自縛といって良い状況にまで至った末に、ロンドン海軍軍縮条約締結に際して、日本海軍の艦隊派は、東郷平八郎元帥の威光等まで背景にして、
「このような軍縮条約を締結されては、日本の防衛に海軍は責任を全く持てなくなる」
とまで主張する事態が起きたのだ。
(その一方、艦隊派の面々の多くが、日米戦争が起きる直前まで、米国から原油等が供給されているとか、一回の艦隊決戦に勝てば、米国は講和に応じるという前提で、対米戦の検討をしていたとあっては。
一部の有識者から、艦隊派は真面目に対米戦を検討しているのか、という批判があったのも、当然としか言いようが無かった。
尚、艦隊派に言わせれば、対米戦で勝つとなると、こういう前提しかない、とのことだったが。
御都合主義と言われても、止むを得ない気がしてならない話ではある)
だが、日中戦争で敗北し、龍驤が失われたことから、その補充として、直ちに中型空母2隻、蒼龍と飛龍が建造されて、又、それに搭載する航空隊も編制されることになったが。
その一方で、日中戦争の敗北に伴い、軍事予算の優遇と言う事態が無くなったことから、大和型戦艦2隻の建造が、当面は停止されるという事態も起きたのだ。
こうなっては、それこそ日本海軍の主な面々からすれば、対米戦になった場合、どうにも日本は勝算が立たないとしか、言いようが無い。
更にはソ連の脅威や、ドイツと連携した中国国民党政府の脅威が、喫緊の課題としてあっては。
幾ら旧艦隊派を中心とする海軍内の面々が、対米戦に備えた海軍の強化を訴えても。
それよりも、ソ連や中国国民党の脅威から、満蒙を守る方が優先だ、という声が日本政府や輿論において、圧倒的に強くなるのは当然だった。
そして、米内光政首相と堀悌吉海相のコンビが、海軍内を睨み据えていては。
(更には、その背後に、今上(昭和天皇)陛下の御意向もちらついていては)
幾ら伏見宮軍令部総長等が、対米戦に備えた海軍強化を獅子吼しても、どうにもならないのが現実としか、言いようが無かったのだ。
ともかく、そうした背景から、日本海軍も対ソ戦、対中国国民党戦を最優先とする軍備の整備に努めざるを得なくなった。
更に言えば、度々述べているが、軍備に対する予算緊縮もある。
そうしたことから、(この世界の)日本では陸軍と海軍、それぞれの軍用機の開発整備に関しては、それなり以上に要求等が共通するものとなり、共用化等が進捗することになったのだ。
そして、この現実に鑑みて日本の航空戦力は、基本的に戦術空軍として整備されざるを得なかった。
戦略空軍化を図るべきだ、との意見が皆無だった訳ではないが、現実論の前に迎え込まれる事態が起きた。
(こういったことから、(この世界では)一式陸上攻撃機の独自開発は行われず、百式重爆撃機を雷撃可能なように改修することでお茶を濁したり、水上爆撃機の開発は断念されたり、水上戦闘機にしても零式艦上戦闘機を改造して、二式水上戦闘機として試作されたりするという事態が起きることになった)
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