第6章―14
そう言った形で、日本本国内において、事実上の日本資本と米英等の資本が手を組んだ合弁による自動車を始めとする様々な工場建設が図られる一方で。
より直接的な兵器等の調達が、日本においては行われるのも止むを得ない事態だった。
それこそ欧米諸国と異なり、先の(第一次)世界大戦での総力戦体制を直に体験していないのが、日本である以上、日中戦争で大量に失われた野砲を始めとする様々な火砲等の補充の為の大量生産が、速やかにかつ順調に行われる訳が無い。
勿論、日本政府、陸海軍部にしても、それこそ米英仏等に泣きつくような形まで執って、戦時には火砲等の大量生産が出来るような体制を築こうとしたが、そんなことが、半年や1年で出来る訳が無い。
更に言えば、日中戦争で大敗したことから、それなりどころではない失われた兵器の再調達が必要不可欠な事態が生じている。
その一方で、常設の海兵隊を創設しようともしており、その為の兵器調達も日本では必要なのだ。
そうしたことから、それこそ先の世界大戦で使われた旧式兵器を、日本は調達するような事態が生じることになったのだ。
最も、それが必ずしも全て悪い話だったのか、というと。
そうは必ずしも言えない、というのが、何とも皮肉な話だった。
「フランスから、旧式化した75ミリ野砲を買ったとのことですが。何で、この野砲はゴム車輪を装備していて、自動車けん引が可能になっているのですか」
「それだけ欧米諸国においては、火砲の自動車けん引が当たり前になっているということだな」
部下の問いかけに対し、少し斜めを見ながら、米内洋六少佐は言わざるを得なかった。
自分達の目の前にあるのは、フランス製のM1897野砲である。
名前から自明だが、1897年にフランス陸軍が制式採用した75ミリの野砲である。
つまり、現在、日本陸軍が新型の90式野砲に更新しつつある、38式野砲(1907年制式採用)よりも旧式の野砲の筈なのだが。
90式野砲でさえ、開発時点では完全に自動車けん引化を想定しておらず、その後の改造で、自動車けん引化が図られたのが、日本の現実だった。
だが、自分達の目の前にあるM1897野砲は、第一次世界大戦時に自動車けん引が可能なように、木製車輪をゴムタイヤ車輪に改修する等のことを行った結果、自動車けん引が可能な野砲として、自分達が装備することになったのだ。
勿論、旧式火砲である以上、間接照準射撃が出来ない等、様々に不満がある。
だが、海兵隊としては、現状に鑑み、今更、馬匹牽引式の火砲を装備するのは問題がある、として、自分達が装備する火砲については、馬匹牽引を排して、完全に自動車牽引式に移行することにしたのだ。
(細かいことを言えば、迫撃砲等は人力での移動が前提で、自動車牽引は考えられていないのだが)
そして、フランス製のM1897野砲は、そういった海兵隊の要求を満たす火砲だった。
更に言えば、完全に旧式化していたことから、フランス陸軍は在庫一掃セールと言っては言い過ぎになるのだろうが、極めて安価で日本に対して、M1897野砲を売却することになった。
勿論、フランス陸軍にしても、それなりに見返りがあった。
こういった兵器売却に因って、日本から得られた資金を基にして、米国に対して、新型火砲等の共同開発を行おうとする事態が起きている。
米内少佐は、身内関係もあって、米内首相から聞かされた内々の話を思い起こさざるを得なかった。
「酷い話だが、内々の関係を使って、お互いの利益を図るのが国際政治では当然だな」
「仰られる通りです」
「だから、黙って目を瞑ってくれ」
「分かりました」
本当に酷い話だ。
米内少佐は、そう考えた。
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