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第6章―10

 そんな黒い会話が、日本政府最上層部では交わされることになったが。


 その一方で、当時の衆議院内部では、1936年、1937年と連年の解散総選挙に、色々な意味で、多くの議員が疲れ果てていたという裏事情もあったのだ。

(実際問題として、解散総選挙となると、様々なモノ、それこそ金や人等が多大に必要になるのは、論を待たないことである)


 その為に、新しく成立した米内光政首相率いる内閣が、新内閣の目玉法案として出してきた国家総動員法案に対して徹底抗戦しては、又も、衆議院の解散総選挙が行われる、という危惧を多くの衆議院議員が抱く事態が起きることになった。


 更には、明らかな戦時中以外の国家総動員法の発動については、事後とはいえ、国会議員の過半数の承認が必要、という妥協案を米内内閣が示したことから。

(尚、目端が利く国会議員の多くが、米内首相の真意を察していたが、そういったことを下手に公言しては、却って首相に難癖を付けている、と見られかねない、とも考えたことから)

 1938年夏、国家総動員法は法律として制定される事態が起きた。


 そして、三井や三菱と言った財閥が主導する財界に対しては、それなりにアメを米内内閣は撒いた。


「満州を、それなりに外国資本に門戸開放するとか。財界が怒らないの」

「うん。怒るどころか、口には出さないが、歓迎するだろうな」

「どうして、そんなことに」

 米内洋六と仁の父子は、1938年夏の休日の昼下がりに、そんな会話を交わすことになった。


「単純に言うとな。満州は日本に取って身に余るモノなのだ。日本の財閥にしても、本音では日本国内に投資した方が儲かるのが分かっている。だが、満州に投資しないと、それはそれで、世論受けが悪いと言う現実があるのだ」

「そうなの」

「実際問題として、国内の工場に閑古鳥が鳴いているのに、満州の工場を造らないといけない等、本末転倒も良いところだ。それに万里の長城以南の中国本土から引き揚げてきた人達に、仕事等を与える必要も生じている。そうした人達に、又、満州に赴け、とは言い難いからな」

「だから」

「日本政府としては、財閥には日本国内に投資をして、工場等を動かしてほしいのだ。それに、あくまでも満州の門戸開放は限定的だ。表向きは満州国、本当は日本の許可が無いと外国資本は参入できない。そして、参入を認めるのは、どうもユダヤ資本のみらしい、という噂が流れている」

 養子の問いかけに、実の叔父でもある養父は答えた。


「一体、どうして」

「言うまでもない。ユダヤ資本に因って、満州の商工業を発展させ、其処に日本のユダヤ人を赴かせたいのさ。先の戦争の影響から、日本を希望の新天地として、日本への亡命、移住を希望するドイツ等の欧州に在住するユダヤ人は増えつつあるからな」

 洋六は偽悪的な表情を敢えて浮かべながら言った。


「そうなると、カテリーナさんも、何れは」

「そうなるだろうな」

 仁は顔色を曇らせながら言い、洋六は肯きながら言った。

 

 子どもは、未だに思慕の念が断ち切れないカテリーナが満州に赴き、自分の目の前にいなくなると想い、何れ来る別れを内心で悲しんだが。

 父の考えは違った。

 カテリーナは、満州に行きたがらないだろう。


 ユダヤ資本家の多くが、アシュケナージ系だ。

 一方、カテリーナはセファルディム系になる。

 ユダヤ人と一括りにされがちだが、アシュケナージ系とセファルディム系は、反ユダヤ主義等の外敵に対しては一致団結するのでそう見えるだけで、実際には、この二つは仲が余り良くない。

 実際に言語まで違うのが現実だ。

 アシュケナージ系はイディシュ語が主だが、セファルディム系はラディーノ語がそれなりなのが現実だ。

 最後の辺りで、アシュケナージ系、セファルディム系の話が出てきますが。

 この二つの系統は、それこそ言語が違う等、ユダヤ人と一括りには出来ない気が、私はします。

 更に次話で描くような事情まであります。


 最も私にしても、専門書を複数読み込んだ訳では無く、ユダヤ人の歴史を、ざっと調べただけなので、間違っていたら、緩いご指摘をお願いします。


 ご感想等をお待ちしています。

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― 新着の感想 ―
>アシュケナージ系、セファルディム系の話 私も全然詳しくはないのですが、現代のイスラエルで書かれた本等を読むと相当な気質の違いが有る様で、対立の根も深いみたいですね。 そもそもユダヤ人の定義自体漠然…
 国家総動員法成立以降の日本の足取り(・Д・)「満洲の門戸を開く」と言うか「中華民国ソ連と凶悪な全体主義国家との角逐の最前線満洲に国内資本を安心して投資出来ないので代わりにユダヤの財を引き寄せる」なか…
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