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第6章―8

 ともかく中国国民党、及びソ連の脅威から、満蒙は何としても守らねばならい。

 それは日本の国威を保つためにも、最低限は必要なことだ、と米内光政首相率いる日本政府、及び陸海軍上層部が考えたことから、(細かいことを言えば、表面上はと言っても過言では無かったが)それなりに挙国一致体制を築いて、日中戦争の大敗から日本を立て直そうと言う動きが起きることになった。

 そんなことから、一例だが、新戦車の開発に関して、陸海軍が協調する動きが起きたのだ。


 他にも、この陸海軍の協調は様々な影響を及ぼすことになった。

 それこそ陸海軍の階級呼称だが、実はこの当時は、かなり相違していたのが現実だった。


 例えば、いわゆる兵の階級呼称にしても。

 陸軍ならば、伍長勤務上等兵、上等兵、一等兵、二等兵と言えたが。

 海軍ならば、一等兵、二等兵、三等兵、四等兵という有様だった。

 下士官の階級呼称にしても、同様に陸海軍で差異があった。

 

 だが、陸海軍が肩を並べて戦うに際して、このような差異は問題である、との声が挙がったことから、陸海軍で(1年以上も協議する羽目にはなったが)、1939年夏には陸海軍の下士官兵の階級呼称については、統一が図られることになった。


 そして、新たに常設となる海軍特別陸戦隊、改め海兵隊の装備についても、基本的に陸軍と共通と言うことになった。

 更には、軍用機等にしても共通化できるモノは共通化しよう、という動きが起きることになった。


 とはいえ、こういったことまで手を広げるなら、民間をも巻き込んでやらないとどうにもならない。


 だが、米内首相には、それなり以上の考えがあった。

 堀悌吉海相は、予備役編入処分を受けた後、日本飛行機社長を務めていた。

 更には、現役海軍士官時代に、

「将来は内閣法制局長官が務まるので、内閣法制局に是非とも呼びたい」

と内閣法制局から嘱望された人材でも、堀海相はあったことから。

 

 堀海相に、民間を巻き込んだ上で、国家総力戦体制を見据えた法制度等を造って欲しい、と米内首相が委嘱したのだ。

 この動きに対しては、今上(昭和天皇)陛下から、

「共産主義の臭いがする」

と不快感を示されたという噂があるのだが。


 米内首相は、第一次世界大戦における欧州諸国の総力戦体制を教示して、こういった総力戦体制を、いざと言う場合には執れるような法制度が必要である等、と今上陛下に何度も奏上(説明)して、1月近くは掛かったが、最終的には今上陛下の了承を得ることに成功したのだ。


 勿論、こういったことは、本来的には海軍がやるべきことでは無く、内閣が強力に主導すべきことで、内閣が行わないならば、内務省や商工省、陸軍省辺りが音頭を取るべきことかもしれなかったが。


 米内首相にしてみれば、それは色々と不味い、と考えた末の行動だった。

(尚、内閣資源局を、それなりに動かす等、米内首相も動いていなかった訳ではない)


 米内首相にしてみれば、戦時に際しては国家総力戦体制に応じた法制度が調えられるのは当然のことではあったが、この1938年初頭当時に、内閣主導でそのような法制度を調えようとしては、それこそ共産党やナチス党の悪夢が過ぎるのが、この当時の日本だった。


(言うまでも無いことかもしれないが。

 ナチス(及びファシズム系の政党)は国家社会主義を唱えており、経済面から言えば、共産主義と極めて親和性が高いと言われても当然の政策を主張しており、統制経済を主張している政党である。

 そうしたことから、内閣主導での国家総動員法制定を、米内首相率いる日本政府は躊躇ったのだ)


 そして、各省の現状を考えた末、堀海相が指導する海軍が音頭を取って、国家総動員法を提起することになった。

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>この動きに対しては、今上(昭和天皇)陛下から、 >「共産主義の臭いがする」 >と不快感を示されたという噂があるのだが。 国家総力戦を本気でやれば、戦争に勝っても皇室の藩屏たる華族やそれに準ずる者(…
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