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第4章―7

 ともかく、(史実以上に)日中間の緊張関係が高まっていたことから、いざという時、日中が開戦したときに備えて、上海方面に陸軍師団を投入するための準備、計画等は事前に参謀本部で行われてはいた。

 その為の師団も、内々ではあったが、予め指定されていた程である。

 

 だが、その一方で、日本側の事前想定よりも、中国国民党軍が大量の部隊を投入しているのが、徐々に判明したことから、日本の参謀本部としても、頭を痛めることになった。


 盧溝橋事件が起きた時の参謀本部上層部だが、閑院宮元帥が参謀総長を務めていたが、御高齢(当時、満71歳)であったことから、参謀次長が実務を本来は担うことになっていた。

 だが、今井清参謀次長が病に伏したことから、石原莞爾参謀本部第一部長が、当時の参謀本部を切り回していたと言っても過言では無く、対ソ戦を重視する石原参謀本部第一部長の下、日中戦争不拡大派の声が強い状況に参謀本部はなっていた。


 そして、盧溝橋事件から日中間の軍事衝突が拡大して日中戦争へと流れる中、参謀次長が戦時中に病休するようでは、ということで、今井清から多田駿に参謀次長は交代する事態が起きた。

 多田駿も日中戦争不拡大派であり、こういった状況から、参謀本部は不拡大派が掌握したと言っても過言では無くなった、となれば良かったのだが。


 実際問題として、石原莞爾の自業自得という側面があったのは否定しないが、この当時の陸軍は、満州事変等の影響から、下剋上というよりも、上剋下に近い状況にあった。

 どういうことかというと、要するに上層部の言うことに部下が、参謀本部の指導に現地軍を始めとするような面々が、素直に従わない状況だったのである。


 だから、参謀本部が幾ら現地軍、例えば、華北にいる陸軍部隊に積極攻勢を採るなと指示を下しても、現地を知らない参謀本部が何を言っている、という感じで、現地軍が積極攻勢を採る事態が起きる惨状が起きる有様だったのだ。


(少し時期がズレるが、内蒙工作を、石原莞爾が押し止めようとして、武藤章に、

「閣下が満州でやったことを、内蒙でやっているだけです」

と主張されて、石原莞爾が黙らざるを得なかった有名な逸話がある。


 尚、細かく言えば、この逸話は、元を糺せば今村均の回想にしか出てこないらしく、その後、石原莞爾が一時的とはいえ、武藤章を引き上げていることから、真偽を疑う人もいる逸話である)


 ともかく、こういう状況であった為に、参謀本部が一生懸命に日中戦争の拡大を押し止めようとしても、現地軍は戦線を拡大しようとする有様で、こうしたことから、蒋介石率いる中国国民党軍も積極的に応戦する事態が起きてしまったのだ。

 こうなっては、近衛文麿首相率いる日本政府、陸海軍にしても、内地からの陸軍師団派遣等を行わない訳には行かなくなる。


 更に厄介なことがあった。

 日貨排斥運動や中国本土における日本人襲撃事件等から、盧溝橋事件勃発以前から、日本本国内で徐々にではあるが、「暴支膺懲」の世論が高まっていた。


 中国国民党政府をガンと一発殴り付けるべきだ、それによって、日貨排斥運動をやめさせ、日本人襲撃事件の取り締まりを積極的に行わせるべきだ、等の主張である。


 盧溝橋事件から第二次上海事変の流れから、この1937年7月から8月は、それこそ日本各地で政財界を問わず、様々な団体に因って「暴支膺懲国民大会」が開催される有様だった。


 更に言えば、本来から言えば、近衛首相は、こういった戦争を煽る国民世論に水を掛けるべきだったが、国民に嫌われたくない近衛首相は、こういった世論を放置してしまった。

 この為に引くに引けなくなる、という様々な悪循環が起きてしまった。

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― 新着の感想 ―
 下剋上なら上がって来た下による全体の掌握(戦国時代はまさにコレ、三河の土豪上がりの徳川家は見事に幕藩体制を築いた)も有り得るのに、珍妙な造語【上剋下】では「上は何がなんだか理解出来ず下は偉くならない…
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