第28章―14
ともかく粘り強い戦いを、このスヘルデ河口の解放を巡る戦いにおいては、日本海兵隊もユダヤ人部隊も強いられることになった。
何しろ戦艦の主砲を駆使した艦砲射撃や、重爆撃機を大量投入したいわゆる絨毯爆撃による敵陣地の大突破等は、とても望めない戦場としか言いようが無いのだ。
何しろ既述だが、ドイツ軍の砲台兼要塞の脅威がある以上、戦艦の主砲を駆使した艦砲射撃を行なうと言うのは、それこそ戦艦フッドの悲劇の再演を覚悟する必要があると言うことになる。
又、重爆撃機部隊の本来の任務は、敵ドイツの工業地帯に対する戦略爆撃である以上、こういったドイツ軍陣地に対する攻撃に重爆撃機を大量投入するのは、誤った用法としか言いようが無かったのだ。
(更に言えば、重爆撃機の本来の用法は、高高度からの水平爆撃であり、当然のことながら、命中率は高いとはいえず、味方を誤爆する危険もそれなり以上に高いモノがあった。
こうしたことも、重爆撃機を大量投入したいわゆる絨毯爆撃を敵陣地に加えることについて、消極的な事態を引き起こすことになっていたのだ)
勿論、そう言った事情が裏ではあるとはいえ、その一方では、99式襲撃機や各種戦闘機を使った近接支援や、又、双発爆撃機等による水平爆撃等が行われなかった訳では無く、又、野戦重砲を使った敵陣地への砲撃が、それなり以上に日本海兵隊とユダヤ人部隊の支援の為に行われはしたが。
日本海兵隊やユダヤ人部隊にしてみれば、そういった砲爆撃では、ドイツ軍の陣地を一挙に崩すこと等は夢物語と言って良く、それこそ粘り強く敵ドイツ軍の陣地をこまめに潰していくしか無かったのだ。
そして、ドイツ軍が陣地を築いて守っている土地は、ある意味では最悪の戦場地形と言っても過言ではないのが現実だった。
それこそ河口地帯であることから、進撃路の多くが大袈裟に言えば軟弱な地盤であり、戦車や重砲といった重装備を最前線で用いようとすると、大変な苦労が必要という事態が起きたのだ。
そうしたことから、水路と陸路を併用した上での進撃を、日本海兵隊とユダヤ人部隊は余儀なくされたが、そうは言っても、海岸部を保持しているのが、ドイツ軍である以上、上流部から日本海兵隊とユダヤ人部隊は基本的に進撃を図らざるを得ない。
そして、上流部からそういった攻撃を行なおうとする以上、陸路を使って、舟艇等を運び込んだ上で、日本海兵隊とユダヤ人部隊は、ドイツ軍への攻撃を行なうしかないのだが。
それこそ陸上で船を運ぶというのは、様々な問題点を生じて、大変な苦労が起きるのは当然だった。
更に言えば、日本の一式中戦車は優秀な戦車ではあったが、この当時では重い戦車なのは間違いなく、陸路を介して運び込むことが出来るような舟艇に搭載して運ぶのは不可能と言って良く、何とか門橋に載せて、ゆっくりと渡河作戦等を実行するのが精一杯だったのだ。
そんなこんなが絡み合った末、西住小次郎大尉等に言わせれば、
「こんなの本来の戦車の用法ではないです」
と言う事態が起きていた。
尚、西住大尉の言葉に、内心では米内洋六中佐も完全に同意してはいたが、そうはいっても、現実的に判断すれば、西住大尉の主張を押し潰すような命令を下さざるを得なかった。
具体的に言えば、戦車を分散して、歩兵支援に充てるという用法だった。
それこそ敵の歩兵中隊が築いた陣地があれば、歩兵中隊を戦車小隊が支援することで、その陣地を攻略しようというのだ。
西住大尉等にしてみれば、戦車は集中運用し、機動戦を展開するモノだったが、ここではある意味では退化したというか、戦車を分散し、歩兵を支援して、敵陣地攻略を行なう事態が多発していた。
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