第28章―5
そんな想いをカテリーナ・メンデスがしていた前後、英仏日等の連合国は、フランス本国全土をほぼ解放した後の大戦略について協議をする事態が起きていた。
大戦略と振りかぶっては言うが、結局のところは、今後のこの世界大戦をどうやって終わらせるのか、という問題である。
ベネルクス三国に加え、ポーランド等は自国領の完全回復を望んでいた。
そして、フランスはこれまでの戦禍に対して、ドイツが完全な賠償を行なうことを望んでいた。
一方、英日はそろそろ世界大戦を終わらせることを優先すべきで、停戦も考えられるとの立場だった。
だが、英日にしても、政府はそういった考えを持っていたが、国内世論は又、別だった。
英日の国内世論は、不当な侵略者であるドイツは叩きのめされるべきだ、それこそヒトラー総統以下を国際軍事裁判に掛けるべきだ、との声が極めて高い現実があったのだ。
(実際、英本国にしても、ドイツ空軍による攻撃の被害を実際に受けているし、日本にしても、それなり以上の戦死者を出しているのだ。
そうした現実があれば、戦死者の遺族や被害者から、ドイツを攻撃する声が挙がるのは当然だった)
ともかく、そういった事情が絡み合った末に、連合国はドイツ政府に対して、まずは全ての占領地の返還等を求める講和を勧告したが。
当然のことながら、ヒトラー総統以下のドイツ政府は、それを拒否した。
ドイツ政府にしてみれば、連合国の講和勧告は、ドイツ人の生存圏を放棄しろ、というものであり、ドイツ人に対して死ねというに等しいモノだ、と言う主張だった。
(尚、ヒトラー総統自ら、ドイツ国民に対する演説の中で、そのような主張を行なった)
そして、講和勧告が拒否された以上、連合国としては戦争を続けざるを得なかったが。
どうやってドイツを講和に持ち込むかとなると、まずはベネルクス三国やノルウェーを完全解放して、デンマークやドイツ本土へと進軍して行く、という方向が、連合軍内部で様々な議論が交わされた末に決まることになった。
合わせて、ドイツ本土に対する戦略爆撃も継続されることになった。
人造石油プラントが最優先目標とされたが、併せて軍需品を作る工場や操車場と言った輸送網に対する攻撃も行われることで、ドイツの継戦能力を削いでいくことになった。
そういった背景から、欧州に派遣された日本軍に対して、どのような任務が割り当てられることになったのかというと。
「まずはベルギーを解放しろですか。更にはオランダも解放しろと」
作戦参謀の八原博道中佐は、鼻を鳴らすような口調で、どちらが上官か分からないような態度で、南雲忠一中将とやり取りをしていた。
「ベルギーも、オランダも独自の軍事力は、今や皆無に近いからな。そういったことから、日本軍とユダヤ人部隊が、ベルギー、オランダの解放任務に率先して取り組むことになった訳だ」
南雲中将は、八原中佐を宥めるように言った。
「フランス軍の主力は、ザール方面に向かいつつある、というのは本当ですか」
「本当だ」
二人は更にやり取りをした。
「フランス政府及び軍にしてみれば、アルザス、ロレーヌを奪還して、更には工業地帯であるザールを抑えたいらしいな。更にその先には、ルール工業地帯までも制圧することで、ドイツを最終的に打倒しようと考えているようだ」
南雲中将は、八原中佐に説明した。
「しかし、フランス軍主力に、そんな力はあるのですか。例えば、戦車にしてもフランス軍の戦車は、ほぼ米国から提供して貰っていますが、ろくな戦車が無い、とささやかれているようですが」
八原中佐は心配そうに言った。
実際、八原中佐の言葉は間違っていなかった。
当時の米戦車は酷いモノだった。
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