第27章―9
私の別作での感想になりますが。
この頃の日本の国力を舐めるな。
史実では英米中等を同時に相手取って勝てるだけの国力を日本は持っていたのだ、それもあって、東條英機首相率いる日本政府は勝算アリとして、太平洋戦争に突入したのだ、と叩かれたことがありますが。
私としては、どうにも賛同できないこともあって、この話の描写をしています。
更に言うまでも無いことだが、中近東地域も混沌とした状況にあると言っても過言では無かった。
アジアやアフリカと同様に、ソ連政府や中国国民党政府は、民族主義やイスラム原理主義者に対して兵器等を輸出することで、自国の経済を積極的に維持しようとして、更に英仏等の足を裏で引っ張ろうとしているようだった。
こうした状況について、日本政府は英仏等の側に立って対応し、ソ連政府や中国国民党政府の足を引っ張ろうとしていたが、そうは言っても、日本の力に余ることで、半ば傍観者に成らざるを得なかった。
結局のところ、日本は大国の末席に連なる身とはいえ、それこそ第二次世界大戦で欧州にまで派兵し、更に満蒙を確保するために、ソ連等と対峙するだけの国力があるのか、というと。
冷静に国力の分析を行なう者程、日本の国力からすれば、相当の背伸びどころか、無理をしているとしか言いようが無いのが現実だった。
日本政府の本音としては、速やかに欧州から撤兵して、日本本国と満蒙に戦力を集中強化して、ソ連の侵攻と国共内戦が終わった後、(この時点での予測としては)勝者となるだろう中国国民党政府の侵攻に備えつつ、国力の増強を図りたいところだったが。
この1941年8月末時点での日本政府の欧州情勢の分析では、後1年はこの世界大戦は終わらないと考えられる。
更に大戦中の欧州からの撤兵は、それこそ英仏等の連合国との友好関係を破壊するし、更に国内世論(それこそ戦争中が終わらないのに、更に戦果を挙げているのに撤兵しては、勝利の果実を味わえず、国民が大きな不満を抱いて当然)からして無理、と大方が予測しているのが現実だった。
(そうしたことが、この閣議の場における賀屋蔵相の態度に表れている。
戦時の蔵相として、様々に苦心して、それこそ日露戦争の反省から外国債に頼らない国家財政規律を何とか維持しているものの、その代償として国内債を濫発して、更に国内債の日銀引受けという禁断の方法を取っている程なのだ。
だが、その代償として、中国国民党政府に比べれば遥かにマシとはいえ、大幅なインフレが日本国内で起きており、戦時中と言うこと、更に言論統制が行われていることで、日本国内で表立った不満が大規模に噴出してはいないが、そうは言っても国民の間で不満が溜まりつつあった。
そうした現状を閣僚の一員というよりも、大蔵官僚の先達として把握していたことから、賀屋蔵相にしてみれば、速やかに第二次世界大戦の終結を望む状況にあったのだ。
だが、所詮は戦争は相手のある事であり、更に周囲の思惑もあって、想うように行かなかった)
「ともかく粛々と英仏等と連携して、欧州で共闘することで、この第二次世界大戦を早期に終結させて、欧州に派遣している海兵隊を始めとする様々な部隊を、欧州から引き上げさせて、日本周辺の不測の事態に備えられる状況を調えるしかないのが現状では無いだろうか」
堀悌吉海相が、腹を括ったように言った。
「全くですな。様々な事情から、陸軍の士官や下士官を、海兵隊に出向させる等の非常手段を講じてはいますが、本来からすれば、このような非常事態は速やかに終わらせる必要がある」
畑俊六陸相も言った。
(尚、此れには少なからずの裏事情もあった。
陸軍内部では、これまでの様々な陸海軍対立の行きがかりから、米国からのレンドリース受け取りの為の方便だと言われても、そうは言っても海軍の一員として、陸軍の軍人を戦わせるのに不満を抱く面々がそれなり以上にいたのだ。
畑陸相は、懸命にそういった陸軍内の不満を宥めてはいたが、そうは言っても陸軍内の下剋上体質は、根強いモノがあり、手を焼く事態が起きていた)
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