第27章―4
カナリス提督は、更に東欧を中心とする欧州等の諸国の状況までも、改めて考えざるを得なかった。
スロヴァキア、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリアといった東欧諸国は、少なくとも表面上はドイツと好意的中立関係にあると言えるだろう。
それこそ、英仏の現状からして、東欧諸国に具体的な影響を与えられるだけの力が、現状では無い。
更に言えば、スターリン率いるソ連政府と、ヒトラー総統率いるドイツ政府と、どちらがまだしもマシな政府か、といえば、東欧諸国の政府にしてみれば、ドイツ政府の方がまだマシといえるのだろう。
そういった現況からすれば、東欧諸国の政府が、表面上はドイツ政府に好意的な中立にあるのも当然と言えるだろう。
そして。旧ユーゴスラヴィア王国領は、現在はドイツが主導して分割占領状態にあると言えるが。
本当に難儀と言える状況にあり、更に言えば、その状況は悪化しつつある、と言っても過言ではない。
ムッソリーニ率いるイタリア政府は、本当に面従腹背というか、ある意味では清々しい程に自国の利益を追及しているようだ。
ドイツ政府の求めに応じて、それなり以上の資源等の供給を行なう一方で、外貨等の見返りをイタリア政府は求めている現実がある。
その一方で、旧ユーゴスラヴィア王国内におけるチェトニック、ユーゴスラヴィア王国王党派を中心とするパルチザン部隊に対する武器等の支援を、イタリア政府は行っているらしい。
この辺りは、イタリア政府なりの小理屈というか、屁理屈もあるのだろう。
旧ユーゴスラヴィア王国の分割占領体制だが、ドイツが主導して行い、イタリアは蚊帳の外に置かれたと言っても過言ではない。
そして、「未回収のイタリア」問題は、相変わらず未解決で置かれてしまったのだ。
ドイツ政府は、こうした状況に対して、それなりの見返りを提示して、表面上はイタリア政府も受け入れざるを得なかったのだが。
そうは言っても、という想いが、イタリア政府内では渦巻いており、チェトニックに対する武器等の支援が行われる事態が起きているのだろう。
カナリス提督は、旧ユーゴスラヴィア王国内の情勢について、改めて頭を痛めざるを得なかった。
そして、北欧諸国の現状についても、カナリス提督は、頭を痛めざるを得なかった。
ノルウェー情勢だが、徐々にドイツ側が劣勢となっており、最悪の場合、ノルウェー領内から年内にはドイツ軍は全面撤退を余儀なくされるのでは、という状況にある。
所詮は支戦線ということから、英仏等の連合軍も力を入れていないのだが、ノルウェー(正統)政府にしてみれば、国土全面奪還は悲願であり、更にドイツ占領下にあるノルウェー領内では、パルチザン活動が活発化していることから、ドイツ軍の全面撤退が検討されつつあるのだ。
そして、スウェーデン政府は、表面上は中立を厳守しつつ、裏では明らかに英仏等の連合国に加担していて、ドイツに対する全面禁輸等の措置を執る一方、フィンランドに対する英仏等の連合国政府の様々な支援について、表面上は口を拭いつつ、裏では積極的に協力しつつある、との情報が自分の手元に複数で届いている現実がある。
尚、フィンランド政府は、もっと露骨なのが現実だ。
フィンランド政府にしてみれば、ドイツ政府と完全に縁を切るのが当然だ、と言わんばかりの行動を執りつつあると言っても過言ではないのだが。
それはドイツとソ連が協調し、ポーランド分割から冬戦争へ至った流れからして、当然と言う側面があるのだ。
こうしたことから、フィンランド政府は、英仏等と積極的に協力して、カレリア地方の完全奪還等を図りつつあるとの情報が流れている。
本当に頭が痛い事態が起きている。
御感想等をお待ちしています。




