第27章―2
カナリス提督を視点とするドイツ側から見た1941年8月末時点の世界状況の話が、4話程続きます。
さて、似たような考えを、この頃のカナリス提督も抱かざるを得なかった。
(下手に前世知識があることも相まって)カナリス提督にしてみれば、日本海軍(!)がドイツ陸軍を、明らかに凌駕している戦車を保有すること等、本当にアリエナイ事態に他ならなかった。
「(自らの知識にある前世と異なる世界とはいえ)日本海軍を母体とする海軍特別陸戦隊では無かった、海兵隊が、何故に我がドイツ陸軍よりも質的に優秀な戦車を、数はともかくとして保有しているのだ」
カナリス提督は、部下になるオスター少将に零さざるを得なかった。
「全くですな。我がドイツの戦車開発関係者全員が銃殺刑になってもおかしくない程です」
オスター少将は、カナリス提督に寄り添うようなことを言いつつ、ズレたことを考えた。
本当に日本海軍と英海軍は、弟子と師匠として深い関係にあるとのことだが。
そういったことが、日英が戦車を開発するのに協力する事態を生み出したのだろう。
更に考えれば、そもそも戦車は、第一次世界大戦の際に英海軍が開発したと言っても過言ではない。
そして、日本はいわゆる満蒙防衛の関係から、世界最大の陸軍であるソ連との戦争、対ソ戦に備えざるを得ない現実がある。
そうしたことまでも考えれば、日本海軍の戦車が、世界でも最強級の戦車になるのもおかしくない。
何しろソ連と中国国民党政府は、蜜月関係にあるらしいのだ。
そして、中国国民党政府は、香港の即時奪還、インド解放を訴えていて、チャンドラ・ボース等を公然と支持しているのだ。
そうした背景からすれば、英国政府、軍上層部が、親日姿勢を取って、日本の戦車開発等に積極的に協力することで、いざという際に備えるのも当然のことではないだろうか。
考え過ぎと言われようと、オスター少将は、そこまで踏み込んだ考えをせざるを得なかった。
そんなことをオスター少将が考えていることを、半ば無視しつつ、カナリス提督は、今後のことまでも色々と考えざるを得なかった。
様々な諜報活動を駆使して集めた情報を、自分が分析する限り、中国の国共内戦は、完全に泥沼化しているとしか、言いようがないようだ。
本来の戦力からすれば、中国国民党側が圧倒的に優勢なのだが、何しろ様々に政権内が腐敗しており、更には経済政策が破綻している、と言ってもよい惨状を呈しているようで、ハイパーインフレが中国国内では起こっているらしい。
そうしたことから、民心は徐々に中国共産党を支持しつつあるらしく、更に言えば、ソ連政府は中国共産党に武器を売却していることもあり、中国共産党が展開しているゲリラ戦が戦果を挙げているという情報までも届いている。
後、何処まで真実なのか、自分としては疑問があるが。
日本政府は表向きは口を拭って、万里の長城以南の中国本土内に大量の阿片系麻薬を売り込んでおり、それによって莫大な利益を上げているという情報までも、自分の手元に届いている。
ともかく、麻薬の蔓延も相まって、内戦状態にあることから、中国本土内は混乱しており、そうしたことから、満州国やチベット、更には仏印やビルマ等にまで、中国本土から難民が流出する事態が、徐々に起きつつあり、そうした難民への対処に、英仏日等は頭を痛めているらしい。
その一方で、満州国は、表面上だけかもしれないが、それなりに安定した状況にあり、欧州を中心とするユダヤ人難民を受け入れ、更には中国本土からの難民を渋々受け入れて、国内の農地開発や、更には商工業振興までも図っており、徐々に富国化しつつあるらしい。
更にソ連はそう言った状況を見て、満州に食指を伸ばしているとか。
カナリス提督としては、頭痛が酷くなる一方の状況だった。
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