第26章―5
そんな挨拶等を、小林はるとその夫に対して交わした後、米内仁は、改めて異父弟妹と向かい合って話し合うことになっていた。
仁からすれば、異父弟妹にして父方従弟妹になる早苗、正、松江は、仁を取り囲んで歓迎した。
(仁の実父の米内正一と、早苗達の実父の米内洋六は実の兄弟になる)
幾ら異母姉の藤子が、常に傍にいるとはいえ、早苗達にしてみれば、仁は濃い身内の一人で、それこそこの正月以来、久々に逢える異父兄にして従兄になるのだ。
更に言えば、早苗達にしてみれば、自らの血を分けた両親は、共に欧州に赴いていて、何時になったら会えるのか、未定としか言いようが無いのが現状なのだ。
そうしたことが相まって、早苗達は、仁にしがみつきかねない有様だった。
「「兄さん」」」
早苗や正に至っては、再会の喜びの余りに涙を零し出してしまい、仁もそれを見て涙を零し、藤子まで貰い泣きをしてしまった。
とはいえ、それなりにだが、すぐに落ち着いて、積もる話を交わすことになった。
「小学校では問題とか、起きていないのか」
「大丈夫。勉強には付いていけてるし、友達とも仲良くやっているから」
仁の問いかけに、早苗は即答し、正も無言で肯いた。
「でも、本当に何時になったら、お父さんやお母さんは欧州から還ってくるの。兄さんは何か聞いていない?フランス本国全土が、ほぼ解放されたのでしょう。今度の年末年始は無理でも、来年の桜の花が咲く頃には、お父さんやお母さんに直に逢いたい」
早苗は、仁に訴えた。
尚、正や松江も、同じような想いをしているのだろう。
仁の返答を聞き逃すまい、と真摯な目で、二人は仁を見つめている。
「来年の桜の花が咲く頃、というのは無理だろうな。それこそ先の(第一次)世界大戦は終わるのに、4年余りも掛かった。それからすれば、今度の世界大戦も、同じくらいは掛かるかもな」
冷たい、と言われそうだが、仁は敢えて突き放すように言った。
実際、仁が海軍兵学校内で、様々な面々、同じ海軍兵学校生から教官等にまで話を聞く限り、多くの者がそう言っているのだ。
更に言えば、自分も同様に考えるのが、現実なのだ。
「そうなの」
それを聞いた早苗は、肩を落としてしょげてしまった。
更に言えば、正も松江も肩を落としてしまった。
正は想った。
もう少し弟妹の気が楽になることを言いたいが、下手に希望を持たせる訳には行かない。
希望が裏切られては、それこそ更に力を弟妹は落としかねない。
そして、藤子も仁と同様に考えているようだった。
「本当に早く両親には帰って欲しいけど、現実を見ない訳には行かないわ。兄さん、弟妹の面倒はしっかりと看るから、安心して海軍兵学校で勉強して。そして、戦場に赴いたら、少しでも戦争が早く終わるように尽力してね」
「はは。自分一人の力では、そんなに戦争が早く終えられるようにすることは、本当に難しい、と考えるけど、早苗や正、松江の為にも、少しでも戦争が早く終わって、両親と再会できるように頑張るよ」
藤子と仁はやり取りをした。
それを聞いた早苗達も、前を向くことになった。
そして、そうしていると時間もそれなりに経つ。
藤子は祖母のはると協力し、仁の為に御馳走を作って、兄弟姉妹仲良く食べて。
それから、兄弟姉妹5人で仲良く数日を過ごした末に。
「それでは、江田島に戻る。弟妹皆、仲良くするのだぞ」
「「はい」」
仁はそう言い置き、早苗や正は即答することになった。
更に仁は、藤子にささやいた。
「弟妹を宜しく頼む。藤子が16歳になったら、すぐに結婚しよう」
藤子は、その言葉を聞いてすぐに、仁に無言で抱き着いて、物陰で接吻した。
仁と藤子は、改めて将来は夫婦になることを誓い合えたのだ。
最後ですが、仁なりに藤子を気遣ったのです。
藤子は仁が本当に結婚してくれるのか、アンナの存在もあって、不安に駆られていました。
そうしたことから、藤子が16歳に成ったら、すぐに結婚しよう、と仁は改めて約束したのです。
これで、第26章を終えて、次話から、欧州のこの頃の戦況を描く第27章に入ります。
尚、冒頭でドイツ側の視点からの描写、国際情勢等の描写をし、その後で、日本を中心とする視点からの国際情勢の描写を行ないます。
そうしたことから、予定を変更して、米内洋六達が再登場するのは、第28章になります。
御感想等をお待ちしています。




