第25章―14
そんなやり取りが、ドイツ軍内部や、日本海兵隊とユダヤ人部隊内部で交わされていては。
この後の戦局の推移は、ある意味では自明の流れになるのは必然だった。
「ドイツ本土の人造石油プラント攻撃に専念して、本当に良いのですか」
「ああ、その方が後々の戦局で影響が大きくなるとのことだ」
「そうなのですか」
そんな会話を、1941年5月後半以降、米内久子は知人の重爆撃機部隊の隊員らと交わしていた。
久子とて、それなりに戦場の臭いを嗅いで、夫に叱られた身である。
だから、重爆撃機部隊所属の知人が、口に出せない事情を察することが出来る。
恐らく、欧州に派遣されている日本陸海軍航空隊上層部の面々は、ドイツ軍による英仏日等の連合軍へ反攻作戦は、完全に峠を越えた、と判断しつつあるのだ。
更に、その後にどうなるかだが、自分の考えに過ぎないが、言わずもがなのことなのだろう。
ドイツ軍主力は、徐々にフランス本国全土占領という目的を放棄しており、ドイツ政府としては、今後は妥当な講和条約締結を目指そうとしていて、そういったことから、ドイツ軍をドイツ本土に集めつつあるのではないだろうか。
勿論、細かいことを言えば、ベネルクス三国本国領の問題もあるし、更にはアルザス・ロレーヌ地域問題もあって、そう易々とドイツとフランスの間で、お互いの自国領が確定して、停戦から休戦に、更には講和条約に至るとは、中々に考え難いが。
そうは言っても、そう言った方向を、ドイツも英仏日等も、各国政府は目指すことになるのだろう。
久子は、色々と考えた末にだが、そんなことを考えてしまった。
又、カテリーナ・メンデス中尉も似たような考えを抱く事態が、同じ頃に起きていた。
「爆弾搭載は不要ですか。有難い話です」
「でも、味方を支援しない訳には行かないのでは」
出撃前のブリーフィングの場で、そんなやり取りを、カテリーナと部下達はしていた。
「爆弾を搭載して、味方と交戦中の敵を爆撃しては、味方に爆弾を降らせかねませんよ」
「確かに」
「それよりも、ドイツ空軍の行動を妨害して、味方の襲撃機等の行動を支援すべきでしょう」
「その通りです」
カテリーナの言葉に、部下達も相次いで賛同することになった。
「それでは、味方の襲撃機等の行動を支援しましょう」
「はい」
そんな話を部下達とした後で、カテリーナは考えていた。
地味と言えば地味だが、ドイツ軍の正面部隊を叩くよりも、後方、補給部隊等を叩くのが正解だ。
味方と対峙している正面部隊を積極的に攻撃しては、味方を誤って攻撃しかねない。
そんな危険が少ない、後方、補給部隊を積極的に自分達は攻撃すべきなのだ。
そう建前では考えつつ、カテリーナの内心、本音は別にあった。
下手に自分が愛機に爆弾を搭載して、敵軍への地上攻撃を行なっては。
弟のカルロや、想い人の米内洋六中佐に、誤って爆弾を降らせるのでは、そんなことがあっては。
とどうにも自分は考えてしまうのだ。
勿論、そんなリスクが極めて低いのは、自分の理性では分かってはいるのだが。
でも、もしも、万が一ということを、自分はどうにも考えてしまう。
そんなことから、後方、補給部隊を攻撃すべきだ、と自分の本音では主張してしまうのだ。
そんな考えを、カテリーナがしている頃、ル・アーブル救援作戦を展開するドイツ軍の戦況は、明らかに悪化している、としか言いようが無い状況に陥っていた。
ヒアツィント・シュトラハヴィッツ少佐を始め、ル・アーブル救援作戦に投入されたドイツ軍の面々は最善を尽くしたと言っても過言では無かったが、それ以前と言って良い事態が起きた。
ル・アーブル守備隊が、連合軍の攻撃の前に降伏する事態が起きたのだ。
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