第25章―13
実際にヒアツィント・シュトラハヴィッツ少佐の予感は、極めて正しかったといえる。
「我々は海兵隊なのだ、ドイツ陸軍の攻撃をひたすら迎撃し、敵を無理な攻撃によって損耗させて、その上で反撃を加えて撃破するのだ」
「はい」
「それにドイツ陸軍の攻撃は、昼間に行われる筈だ。
決して油断するな」
「はい」
米内洋六中佐は、部下達に厳命して、部下達はそれに答えた。
西住小次郎大尉は、上官の米内中佐の命令を聞いて考えた。
確かに言われる通りだ。
航空偵察等に依れば、ドイツ軍の戦車は、新型の主砲を搭載しているようだ。
自分達も新型戦車に乗っているとはいえ、実は、という事態があってもおかしくない。
それに戦車部隊を夜襲に使えない訳ではないが、普通に考えれば、戦車乗りの視界は狭く、それこそ夜戦においては、歩兵の好餌に戦車はなりかねない。
そうしたことからすれば、昼間に戦車戦を挑もうとするのは、理の当然だ。
そして、そこまでの接近戦となれば、航空支援や重砲による支援は、味方撃ちの危険が高くなり、どうしても躊躇われる事態になる。
昼間に戦車を主力にして、歩兵が支援しての攻撃作戦を、ドイツ軍は展開するだろうが。
まずは迎撃戦闘に徹し、それで、敵のドイツ軍を損耗させた上で逆撃してやる。
上海近郊での屈辱を数十倍にして返してやる。
西住大尉は、上海近郊で戦死した上官や同僚、部下達のことを思い起こして、改めて決意した。
そして、シュトラハヴィッツ少佐率いる戦車大隊を最先鋒にして、ドイツ軍はル・アーブル救援作戦を発動することになったが。
「ダメです。味方の戦車の装甲は紙ですか。当たれば、正面でも容易に抜かれます」
「少し迂回して、敵戦車の側面を狙うのだ」
「迂回しようとすれば、対戦車砲部隊等が、側面等を狙ってきます」
「そもそも、何で敵の戦車はセーヌ川を渡河しているのだ」
「更に言えば、味方の戦車よりも明らかに敵戦車は大きくて、装甲も厚く、主砲も大威力です」
「ちょっと待て、敵の日本の戦車は、海軍の戦車の筈だな」
「その通りです。日本海軍の象徴といえる桜に錨が入っています」
「BBC放送は真実を報道していて、ゲッペルスは嘘の報道をしていたのか」
「そのようです、ドイツ陸軍の戦車は、日本海軍以下の戦車だということです」
「ちょっと待て、ドイツの戦車関係の技術者どもは、何をしていた、日本の海軍の戦車より劣る戦車しか、開発できていなかった、ということか」
「その通りのようです」
「そんな現実が認められるか」
シュトラハヴィッツ少佐、及びその部下達は、そんな会話を交わしながら、日本海兵隊とユダヤ人部隊が籠っている防御陣地帯を強攻する羽目になっていた。
そして、言うまでもなく、ドイツ軍の方に損害が続出することになる。
何しろ応急で造られたといっても過言ではないと言え、陣地帯への攻撃を行なわねばならないのだ。
更に言えば、ドイツ軍は補給を常に気にしながら、戦わざるを得ないのだ。
「今の燃料は」
「手持ちが全てです」
「今の弾薬は」
「後1回の攻撃が出来るだけの予備がある、と言えるでしょうか」
「更なる補給は何時だ」
「何時かは約束できないとの連絡がありました。
後方連絡線を、英仏日等の連合軍航空隊、更にはレジスタンス部隊が集中攻撃しており、補給物資の輸送が遅延し、又、失われる事態が多発しています」
シュトラハヴィッツ少佐は、副官とそんなやり取りまでもする羽目になった。
その一方、米内中佐と西住大尉は。
「燃料弾薬共に補給は充分か」
「問題ありません」
「糧食はどうだ」
「味噌や醤油が欲しい、と部下達は零しています」
「贅沢な奴らだ、ここはフランスだぞ」
そんな会話を交わしていたのだ。
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