第25章―11
ル・アーブル救援の為に、ドイツ軍は2個装甲師団を先鋒にして、歩兵4個師団を支援に充てて、それによって、日本海兵隊とユダヤ人部隊、合計10個師団から成るル・アーブル攻囲部隊を突破しようと策していた。
更に言えば、ル・アーブルで救援を待ち望んでいるドイツ軍部隊は、一部の重装備を失ってはいるものの額面上は3個歩兵師団に達していて、その戦力は2個歩兵師団相当と敵味方双方に判断されており、ドイツ軍が挟撃作戦を展開すれば、ル・アーブル救援作戦は可能なように、ドイツ軍が判断するのも当然、と言われてもおかしくなかった。
だが、その大前提として、救援部隊である6個師団が全力発揮可能な必要があったが、燃料不足に苦しみながら、ドイツ軍は救援部隊を向かわせるしか無かったのだ。
更にドイツ軍にとって誤算があった。
セーヌ川という大河を渡河して、日本海兵隊とユダヤ人部隊は、ル・アーブルを攻囲している。
そして、セーヌ川に掛かっている橋全てを、ドイツ軍は確保している状況にある。
そうしたことからすれば、セーヌ川を渡河して、セーヌ川右岸に展開している日本海兵隊とユダヤ人部隊は充分な戦車を保有していない筈だ。
仮に戦車があっても、いわゆる軽戦車が、日本海兵隊やユダヤ人部隊は精一杯だろう。
そのような予断を持って、ドイツ軍の救援部隊は、ル・アーブルに急行していたのだ。
更に言えば、鏡を見ていたと言われても仕方ないが、この当時のドイツ軍は、史実でもそうだったが、35トン級の戦車を保有していなかった。
海洋国、島国である日本が、35トン級の戦車等を保有している筈がない。
陸軍国である我がドイツでさえ、主力の3号戦車は20トン級、4号戦車でさえ25トン級ではないか。
仮に保有していたとしても、極少数だろうし、渡河資材も対応していないだろう。
そのように、ドイツ陸軍上層部は判断していたのだ。
(尚、カナリス提督以下のドイツ軍諜報部、国防軍情報部の面々は、この世界でも、それなり以上の努力をしており、日本軍の新型戦車、一式中戦車は、ソ連の新型戦車、Tー34に対抗する為に、30トンを越える強力な戦車で、我がドイツの主力戦車を凌ぐ性能の可能性がある、と各所に警告したのだが。
それこそギリシャ悲劇に出て来るカサンドラの予言ではないが。
ヒトラー総統やドイツ軍上層部の殆どの将帥に、
「ドイツ軍諜報部、国防軍情報部は、日本恐怖症に掛かって発狂した」
と言わんばかりの反応を、ル・アーブル救援作戦発動前には取られる事態が起きた。
そして、このル・アーブル救援作戦終結後には、
ヒトラー総統直々に、
「カナリス提督以下のドイツ軍諜報部、国防軍情報部は無能だ。
日本軍の新型戦車の性能一つ、マトモに入手出来ていなかったとは」
と非難を浴びせられ、ドイツ軍上層部の殆ども同調する事態が起きたのだ。
それに対して、カナリス提督らは懸命に反論したが。
「貴官らの警告が不十分だったから、このような事態が起きたのだ」
という批判を一致して、更に受ける羽目になり、ドイツ軍諜報部、国防軍情報部の多くの面々の士気を失墜させる事態が起きることになったのだ)
話が余りにも先走ったので、ル・アーブル救援作戦が実際に本格化して、ドイツの2個装甲師団が、日本海兵隊やユダヤ人部隊の防衛線突破を図ろうとする段階に話を戻すが。
ともかく、燃料不足に苦しみつつ、主に夜間に移動して、ル・アーブルへと向かっていたドイツ装甲師団、特に戦車部隊にしてみれば、いきなり悪夢を見る羽目になった、と言っても過言では無かった。
明らかに自分達より強力に見える戦車部隊が自分達の眼前にいて、更に陣地に籠って待ち伏せていた。
アリエナイにも程がある、と言われそうですが。
それこそ史実の真珠湾空襲以前に、米国政府の一部の面々は、諜報活動に依れば、真珠湾空襲の危険がある、と警告を発していたのに。
「そんなことはアリエナイ」
という批判の嵐を米国政府や軍の大半から浴びた一方で。
真珠湾空襲後に、それこそ21世紀に至るまで、
「米国政府は、真珠湾空襲を完全に察知していた。日本は戦争を強いられたのだ」
唐の陰謀論が跋扈する事態に。
そうしたことからすれば、十二分におかしくない流れと考えて、執筆、投稿しました。
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