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第25章―10

 この当時、1941年5月に英仏日等の連合軍が、ドイツ軍に対する大反攻を、ノルマンディー、ブルターニュ半島方面から開始して、ドイツ軍の防衛陣地の多くが崩壊した直後の時点だが。


 ドイツ軍の上層部は、今後の方針について、ヒトラー総統に諮る以前は、次のように考えていた。

 既にフランス本土全体で、レジスタンス祭りと言って良い事態が起きつつある。

 そうしたことからすれば、セーヌ川以南を徐々に放棄して、セーヌ川の河口部、ル・アーブルからパリまでのセーヌ川をまずは盾として、セーヌ川以北を固守する方向とする。


 だが、そうは言っても、更に英仏日等の連合軍は、東方への迂回を更に図る筈。

 又、つい最近のユーゴスラヴィア王国の内戦勃発からの、事実上の旧ユーゴスラヴィア王国の分割統治への移行が、イタリア政府、軍の反感を買っていることからすれば、流石に公然とイタリアがドイツに宣戦布告するまでのことは無いとしても、密かに英仏日等の連合軍への便宜を、イタリア政府の一部等が図る可能性は極めて高いだろう。


 そうしたことから、捲土重来を策して、セーヌ川以北も徐々に放棄して、いわゆる独仏国境線へドイツ軍の主力を損なうことなく、撤退させるべきだろう。


 そのようにドイツ軍の上層部は、今後の計画を立てていた。


 そして、基本的にセーヌ川右岸沿いに、まずはル・アーブル救援部隊を、ドイツ軍は向かわせることにしたのだが。


「戦車は無視。専らトラック等の輸送部隊を狙い撃ちしなさい。場合によっては、私達も支援する」

「確かに、それが賢明ですね」

 日本陸海軍航空隊でも、ユダヤ人航空部隊でも、更に言えば英仏等の欧州諸国の空軍、航空隊でも似通った会話が交わされる事態が起きており、ドイツ陸空軍は、その対応に悪戦苦闘する事態が起きた。


 ノルマンディー、ブルターニュ半島の戦線が崩れたことは、ドイツ陸軍に機動戦を強いる事態を引き起こすことになっていた。

 そして、機動戦を展開する以上、燃料が特に戦車、自動車化部隊にとっては必要不可欠である。


 その為に、各種襲撃機、軽爆撃機を装備する英仏日等の連合軍の航空隊は、燃料等を運ぶ補給部隊を狙い撃ちにする事態が起きた。

 更にドイツ空軍の戦闘機の脅威が無ければ、連合軍の戦闘機部隊まで、それに参加して。


 例えば、カテリーナ・メンデスに言わせれば、

「今後、戦闘機部隊が地上部隊を銃撃する際に備えた実戦訓練よ。ガソリンタンクを目標にして命中したら、火柱が上がって、部下達も命中した、と興奮して頑張るわ」

という事態が起きて。

 更には、連合軍の戦闘機部隊の主な指揮官も似通ったことを言う事態が起きて。


 ドイツ軍の補給部隊を、連合軍の航空隊は狙い撃ちにしようと努めることになったのだ。


 ともかく、このことにドイツ軍は頭を痛めることになった。

 燃料不足で動かない戦車等、ただの鉄の棺桶と侮蔑されて当然である。

 

 実際に、当時の日本海軍の空母部隊に搭載されていた99式艦上爆撃機の部隊指揮官の一人である江草隆繁少佐は、次のように第二次世界大戦終結後に雑誌記者に述べた程である。

「もう動かないドイツ軍の戦車を狙って、急降下爆撃で爆弾が当たるか否かを楽しむ、私の部下までいる始末でしたよ。

 それ位、この当時のドイツ軍の戦車は前線近くになる程、燃料不足で動いていませんでした」


 これは流石に戦意高揚もあって盛った発言ではあるが。

 実際にル・アーブル救援の為に急行しようとするドイツ軍の戦車、自動車化部隊が、連合軍の航空隊による補給部隊の狙い撃ちに苦しめられたのは事実だった。


 そういった背景もあり、ル・アーブル救援作戦にドイツ軍は苦戦を強いられる事態が起きることになった。

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― 新着の感想 ―
> セーヌ川の河口部 >https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%AC%E3%83%90%E3%82%B9%E7%B4%9A%E3%83%A2%E3%…
>江草隆繁少佐 史実世界でも爆撃王。こちらの世界でも同期(海兵58期)の奥宮正武氏の著作で大活躍ぶりが読めるでしょう。読んでみたい。
史実では大物狙い志向だった日本軍がチクチク補給路破壊に転じるとは、変われば変わる物ですね。戦車戦やろうにも制空権がなければそれもままならぬと。
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