第25章―9
そして、ドイツ装甲師団の脅威に対する認識は、ユダヤ人部隊にも共有されていた。
「2ポンド砲しかないので、何処まで当てになるか分からないが、正面以外ならばドイツの戦車の装甲を抜けると信じろ。実際に本国部隊や、日本海兵隊の情報が正しければ、その通りだからな」
「はい」
初陣で分隊長や複数の同僚が死傷したこともあって、かなり内心は荒んでいたのだが。
表面上はかなり取り繕って、カルロ・メンデス一等兵は同僚と共に、新たな分隊長に返答していた。
カルロは改めて考えた。
2ポンド対戦車砲があるから、まだマシと考えるべきなのだろうが。
この対戦車砲にしても、榴弾が撃てないので、戦車以外のトラック等には過剰な威力で、又、歩兵に対しては余り有効ではない、との噂を聞いている。
本当に戦場はクソだ。
実際、2ポンド対戦車砲を除けば、ユダヤ人部隊の歩兵の対戦車兵器はお寒いモノがあった。
それこそ、ボーイズ対戦車ライフルやNo.68AT擲弾しかない、と言っても過言では無かった。
勿論、上記の対戦車兵器が全くの役立たずだったことは無いが、そうは言ってもだったのだ。
その一方で、他人の芝生は青いではないが。
日本海兵隊が、70ミリ対戦車ロケット(噴進)砲を、歩兵(海兵)の対戦車兵器として配備しつつあると見聞きしていては。
カルロ以外のユダヤ人部隊の歩兵の多くの面々も、カルロの意見に同意していた。
ともかく、そういった裏事情もあったことから、ル・アーブル守備隊を救援しようとするドイツ軍の先鋒を構成している装甲師団については、日本海兵隊、特に臨時に集中して編制された戦車部隊が、主に盾として対処する事態が起きることになった。
又、ユダヤ人部隊の多くは、ドイツ軍の救援部隊の側面を南から衝くことで、ドイツ軍の足止めを図ろうとする事態が起きることにもなった。
(更に言えば、ユダヤ人部隊には、信頼できる新型戦車が、ほぼ配備されていないという事情もあった。
何しろ英陸軍上層部にしてみれば、本国部隊等に新型戦車を優先配備するのが当然で、外人部隊と言えるユダヤ人部隊への新型戦車配備は後回しにして、何処が悪いというのが本音だった。
そうしたことから、尚更に日本海兵隊の戦車が盾の役割を果たす事になったのだ)
それらが絡み合った末に。
「複数の陣地を築いて構えて、適宜、戦車を移動させて、敵襲に対処するのだ」
「余りにも警戒し過ぎではないでしょうか。この新型の一式中戦車ならば大丈夫では」
「それが慢心だというのだ。もしも、ドイツ軍の新型戦車が想定より強力だったらどうする」
「確かに」
「再度、上海近くでの屈辱を舐めたいのか」
「いえ、絶対に御免です」
(主に)米内洋六中佐と西住小次郎大尉とは、そんなやり取りをしつつ、ドイツ軍の迎撃準備をした。
実際に米内中佐の本音としても、余りにも厳重にドイツ軍戦車の迎撃準備をしているのでは、という疑念を覚えてならない。
だが、1937年の上海における悪夢を考えれば、更に少しでも確実に勝利を収めるためには。
そう言ったことを考える程に、南雲中将直々と言える厳重な陣地構築と、ドイツ軍が全滅するのではないか、と考える程の様々な対策を、自分達が講じるの当然としか、言いようが無いではないか。
そして、米内中佐らの奮闘、陣地構築等の準備は決して無駄では無かった。
巧みな陣地構築等は、必然的にドイツ軍装甲部隊の進撃路を狭めることになり、日本海兵隊やユダヤ人部隊にその進撃路を予測させ、更にその精度を高めることになった。
そうなると牽引式の対戦車砲も側面等から有効な打撃を与えることが出来るようになる。
ドイツ装甲部隊は苦戦を強いられることになった。
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