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第4章―2

 そういった状況に対応しようと、日本軍というよりも日本海軍は、中国国民党軍に対する渡洋爆撃を計画して断行したのだが。


 何処まで本当か分からないが、自分(米内洋六少佐)が聞く限り、ドイツから派遣された軍事顧問団(と言いつつ、実際にはその顧問の一部が実際に軍用機に乗って戦場で戦っているらしい、とも聞くが)によって指導、編制された中国国民党空軍の面々に因って、渡洋爆撃を断行した日本海軍機の3分の1が、1回の爆撃行で失われる事態が起きたことから、渡洋爆撃は1回のみで中止されたらしい。


 実際、自分としてもあり得る話だ、と考えてしまう。

 渡洋爆撃を行うとなると、戦闘機の護衛ナシで、爆撃機(陸上攻撃機)のみでの爆撃行となる。


 昨今、戦闘機無用論が幅を利かせつつある。

 爆撃機は高速化しつつあるし、又、自衛の為の機関銃が増設されるといった対策も取られている。

 だから、対爆撃機戦闘を戦闘機が行った場合、戦闘機に損害が続出する事態が起きるだろう。

 そう言ったことを考えるならば、戦闘機は無用で、爆撃機こそ重視されるべきだ等の主張である。

 

 だが、自分(米内少佐)としては、そう簡単に言えるのか、という疑問を覚えていた。

 どうのこうの言っても、爆撃機は鈍重な存在だ。

 戦闘機の護衛が求められる等の事態があるのではないか。


 そう自分が考えていたのを肯定するかのように、渡洋爆撃隊は大損害を受けたようだ。

 自分の考えが当たっていたのを、素直に喜ぶべきかもしれないが、このことは更に厄介な事態を引き起こしつつある。


 当たり前と言っては語弊があるが。

 上海近くに日本軍の軍用機が展開できる飛行場は、この時点で皆無といって良かった。

(だからこそ、渡洋爆撃を日本海軍は断行せざるを得なかった)

 その為に、中国国民党軍が上海周辺の制空権を確立するのは、当たり前といって良かったのだ。


 勿論、緊密に中国国民党の地上部隊と空軍が連携して、自分達に攻撃してくるのは、航空無線等の様々な技術的問題から困難というよりも、(この時代的に)不可能といって良いことではある。


 だが、空を舞うは中国国民党空軍機のみ、と言う状況は、自分達、上海海軍特別陸戦隊の面々にしてみれば、重圧を感じざるを得ない。

 実際にそう言った状況に鑑みて、日本本土において急きょ編制されて、上海に投入されることになった海軍特別陸戦隊の面々の輸送手段だが、駆逐艦を夜間に急きょ突入させることで、上海に部隊を送り届けるという手段が執られている有様なのだ。


 勿論、世界第三位の規模を誇る大海軍の日本海軍が、こういった状況を看過出来る訳が無い。

 何しろ複数の空母までも、日本海軍は保有しているのだ。

 だから、上海海軍特別陸戦隊支援の為に、空母が投入されることになる、という噂が、米内少佐の耳にまで届いてはいるのだが。


 米内少佐の知る限り、それにも問題があった。

 1937年8月の段階において、「赤城」は改装中であり、実戦投入は不可能だった。

 日本海軍で投入可能な空母は、大型の「加賀」と中小型の「龍驤」と「鳳翔」の合計3隻に過ぎない。


 こんな状況下で、本当に上海海軍特別陸戦隊に有効な航空支援を、日本海軍は可能なのだろうか。

 

 勿論、これだけの空母、3隻を上海海軍特別陸戦隊支援に差し向けられるのは、他に米英しかいないのも、世界の現実ではあるが。


 だからといって、渡洋爆撃を1回で中止せざるを得ない程の航空戦力を、孜々営々とした努力で中国国民党空軍が整備しているのも現実なのだ。

 更にこの3隻の空母にしても、これまでの運用からして分散投入されるのではないか。

 そんな考えまでが、米内少佐の脳裏では過ぎる。

 米内少佐は不安でならなかった。

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― 新着の感想 ―
 戦闘機無用論って当時の議論を現代人が文字通りに読めばそういう話になるんですが、実際のところは 「レーダーに映らない事をステルスと言うのなら、レーダーの発明前の航空機は全てステルス機」  って意味…
 如実に戦果として現れるカナリス提督の歴史改変(・Д・)護衛機ナシの鈍重な陸攻でドイツのスーパーエースが駆る戦闘機とのぶつかり合い!結果は大損害から即座に渡洋爆撃の中止に至る怖いほどのワンサイドゲーム…
>3分の1が、1回の爆撃行で失われる >渡洋爆撃は1回のみで中止 史実を考えると一回のみで良かったと言えるが、爆撃隊は再建に相当時間が取られそうですね。生き残った搭乗員も機数の割に少なかったのでしょ…
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