第25章―3
そんな事態が一部では引き起こされたが、それでも、英仏日等の連合軍の総力を挙げたといえる砲爆撃は、ドイツ軍の防衛線の多くを崩壊させた、と言っても過言では無かった。
その一方で、一部は既述だが、一部の地域では誤算が生じるのは、避けられないことだった。
例えば、ル・アーブル近郊では、ドイツ軍の砲台兼要塞の奮戦により、フッド轟沈、長門大破という事態が起き、更にはドイツ軍の砲台兼要塞の破壊に努めたことから、予定通りには、ドイツ陸軍が築いた防衛陣地に対する艦砲射撃が行われない事態が起きることになった。
又、他の場所でも重爆撃機部隊による爆撃が行われて、ドイツ陸軍が築いた防衛陣地を崩壊させる筈が、誤爆があったこと等から、防衛陣地が破壊されないという事態も起きることになった。
そういったことが絡み合ったことから。
南雲忠一中将は、司令部の面々を集めた場で、5月10日の午後に戦況分析をしつつ、渋いとしか言いようが無い声を挙げざるを得なかった。
「ブルターニュ半島南部では、ドイツ軍の防衛陣地を大きく崩壊させることに成功したが、ノルマンディー半島では、そう完全には上手く行かなかった。ブルターニュ半島北部は、その中間と判断すべき、ということで間違いないだろうか」
「その通りです」
遣欧日本海兵隊総司令部の作戦参謀を務める八原博通中佐は、南雲中将の問いかけに即答した。
「それで、我々は、今後、どのように動くべきと考える」
南雲中将は、司令部の面々に問い掛けた。
言うまでも無いことだが、南雲中将は水雷屋であり、陸上戦闘については、ほぼ知らないと言われても仕方のない身である。
そうしたことから、南雲中将は、司令部の面々の意見を聞いた上で判断するのを基本としている。
「私としては、ル・アーブルを我が日本海兵隊で攻囲し、その一方で、英仏等の連合軍の面々は、速やかにフランス本国全土の解放を図っていくべき、と考えます」
八原中佐は提言した。
「その理由は」
「ル・アーブルで、我が方はフッドを沈められ、長門を大破させられました。そんな戦果を挙げた、ドイツの砲台兼要塞を、我々は看過する訳には行きません。何としても陥落させるべきだ、と考えるのが通常の考えでしょう」
南雲中将の問いに、八原中佐は答えた。
「ふむ。間違ってはいないな。我が遣欧艦隊司令部からは、ドイツの砲台兼要塞の破壊に成功した、という連絡が届いてはいるが、それが誤っていた場合、日本海兵隊の頭上に、巨弾が降ってくることになる」
八原中佐の言葉に、南雲中将は、そう言わざるを得なかった。
「当然にドイツ軍も同様に考えるでしょう。それ故に、我々は、ル・アーブルを完全制圧し、更に砲台兼要塞の完全制圧を図るように見せかけるのです」
「見せかけるだと」
八原中佐の更なる言葉に、南雲中将は思わず目を見開きながら、疑念の声を挙げた。
「これまでのドイツ軍の防衛線の大半が崩壊した、と言っても過言ではない状況が起きました。その一方で、ル・アーブルは固守されている。こうした状況下、ヒトラー総統の性格からして、ル・アーブルを速やかに放棄する、と考えられますか。むしろ、ル・アーブルを防衛拠点として維持し、防衛線を再構築しようと考えるのでは」
八原中佐は、更なる説明を行い、その説明に南雲中将のみならず、他の司令部の面々も唸った。
暫く唸った後、南雲中将は言った。
「ル・アーブルを速やかに攻略しようとしている、と見せかけることで、ドイツ軍の救援部隊を誘致して叩くのが至当だ、ということか」
「その通りです」
八原中佐は、提言した。
「うむ。自分も妥当な考えだと考える。速やかに行動せよ」
南雲中将は、決断を下した。
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