第25章―2
そんなことを、米内久子やカテリーナ・メンデスは、この頃に考えていたのだが。
最前線にいると言っても過言ではない、米内洋六やカルロ・メンデスは別の想いをしていた。
「いよいよか」
米内洋六は、それだけを口に出して言った後、眼前に広がる光景を無言で眺めながら、物思いに耽らざるを得なかった。
いよいよ英仏日等の連合軍による、ドイツ軍への大反攻が始まることになったのだ。
自分の内心では不安があるが、そうは言っても、これだけの大量の重軽砲、それこそ上は20サンチ以上の大加農砲や大榴弾砲から、下は75ミリの野山砲まで投入された大砲撃が行われているのだ。
更に言えば、これだけの砲撃が浴びせられる中で、それに加えて、重爆撃機から臨時に戦闘機から転用された戦闘爆撃機までが投入された爆撃が浴びせられた上で、ドイツ軍の防衛陣地を蹂躙、突破する攻撃が行われようとしているのだ。
(これは、少しでも奇襲効果を、この攻撃に際して与えようと考えられたことから行われたことだった。
それこそ黎明時から連合軍の航空隊が爆撃を行なうのは、戦場の暗闇(一応、満月の明かりを活用することになってはいたが)から、連合軍の地上部隊への誤爆の危険が高い、と危惧されることになった。
その為に、日の出前の黎明時を活用して、ドイツ軍の防衛線、陣地に対する猛砲撃を開始することにして、更にそれによって発生する煙等を活用することで、誤爆の危険を減らすことになったのだ。
実際、この方法はそれなり以上の効果を挙げることになった。
カテリーナ・メンデスは、戦後の回想録で、次のように回想した記述を残した。
「自分達が、味方とドイツ軍が対峙している最前線に赴いたところ、大量の煙が挙がっているのが、目に入ることになった。
事前の指示から、この煙の東側に居るのが、ドイツ軍だ、と自分達には分かったので、容赦のない爆撃を加えることが出来たのだ」
カテリーナ以外にも、複数の搭乗員が似たような回想録を残している。
こうしたことからすれば、この方法はそれなり以上の効果を挙げたのは間違いなかった)
そして、この大砲撃が完全に収まる以前から、様々な航空機による大爆撃が始まった。
まずは、重爆撃機部隊による絨毯爆撃が行われた、と言っても過言では無かった。
更には、中爆撃機による爆撃が始まり、更には、襲撃機や戦闘爆撃機までが、ドイツ軍に対する爆撃任務を遂行した。
最も、その頃になると、ドイツ空軍による妨害が、徐々に本格化するようになった。
それこそドイツの戦闘機部隊が、英仏日等の連合軍の航空隊を迎撃して、味方に対する爆撃を少しでも妨害しよう、と試みる事態が起きるようになった。
こうしたことから、後に成って、ドイツ軍に対する爆撃任務を行なう手筈になっていた連合軍の航空隊は、止む無く爆弾を捨てて、ドイツ空軍機と戦う事態が起きることになり、それこそ味方に爆弾を浴びせているのでは、と米内中佐からすれば危惧する事態が起きた。
「本当にかなわんな。戦場では止むを得ないことかもしれないが」
そんなことを米内中佐は考えた。
一方、それでは済まなかったのが、カルロ・メンデスだった。
「咄嗟に地面に伏せたから、自分は助かったけど」
そう呟きながら、周囲を見渡すと、ドイツの戦闘機に襲撃されたことから、爆弾を捨てて味方機が応戦する事態が起きて。
その捨てられた爆弾によって、自分の同僚や上官が死傷しているのが、目に入って来た。
「カテリーナ姉さんが言った通りだ。本当に戦場は地獄だ。味方が投下した爆弾で、自分達が死傷するなんて」
カルロは、そう呟きながら、死傷した上官や同僚を少しでも救おうと懸命に努力することになった。
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