第24章―25
そんな想いを佐藤少尉はすることになったが、日本海兵隊の完全包囲下で、補給が途絶する状況とあっては、ドイツ軍の抵抗も、そう長続きはしなかった。
更に言えば、日本海兵隊には、補給がそれなり以上に届いているのだ。
徐々にドイツ軍の弾薬等は欠乏していくことになり、又、日本海兵隊は着実に、ドイツ軍の抵抗を排除して、ル・アーブル市街を歩兵の足で制圧していくことになった。
そんな市街戦が一週間余りも続いた末、ドイツ軍の抵抗も、ほぼ終わりを遂げようとする事態が起きつつあった。
勿論、ドイツ軍にしても、ル・アーブルで抗戦している味方の面々を、何とか外部から救援しようとしなかった訳ではない。
だが、詳しくは次章で描くが、ノルマンディー、ブルターニュ半島橋頭堡からの英仏日等の連合軍の大攻勢の発動は、フランス本国全土に亘って、レジスタンス部隊の大規模な蜂起を引き起こすことにもなっていた。
更に言えば、ドイツ軍の防衛線を決壊させたといえる、英仏日等の連合軍の最初の大攻勢で前線支援に多用された戦略•戦術各航空隊は、ドイツ軍の後方輸送網に対する攻撃等を改めて展開するようになり、後方にいるドイツ軍が前線に向かうのを、極めて困難にさせてもいたのだ。
そうしたことから、ル・アーブルに立て籠もって抗戦するドイツ軍上層部の面々は、外部から自分達を救援しようとする動きがあるが、それが自分達を本当に救援できるのか、と考えると。
実際には、それは不可能なことだろう。
更に言えば、弾薬等の補給物資が、自分達の手元からは欠乏しつつある。
徐々にこれ以上の抗戦は困難であり、抗戦を続けても無駄死にするだけだ、と冷たい判断を下すことが多発するようになり、白旗を掲げて、武器を置いて、英仏日等の連合軍に投降する部隊が、ル・アーブルに立て籠って抗戦しているドイツ軍の中から増える事態が起きるようになった。
その中には、全ての爪と牙を折られたといえるドイツ海軍の軍人が立て籠もっていた砲台兼要塞の守備隊の面々もいた。
1941年5月20日、リンデマン大佐は、部下の一人に対して命じていた。
「白旗を掲げて、日本軍に対して投降し、この砲台兼要塞を明け渡す、と伝える使者になってくれ」
「分かりました」
命ぜられた部下は敬礼しながら、即答した。
「この砲台兼要塞を守り抜いて、最後の一人が戦死するまで戦うべきなのだろうが。
フッドを沈めて、長門型戦艦1隻を大破させる戦果を挙げて、ドイツ海軍の最後の意地を果たせた以上は、これ以上の抗戦を続けて、部下達を死なせたくない。
恐らく、我が祖国のドイツは、この世界大戦でも敗北の運命をたどるだろう。
その際に、生き延びた部下達が、何れは祖国再建の礎となれるように、裏切り者の汚名を自分は被ろう、と考えるのだ」
リンデマン大佐は、部下に対して言い、その言葉を聞いた部下は落涙した。
「さあ、早く行け。私の決心が変わらない内にな」
「はっ」
リンデマン大佐の命令を受けて、部下はリンデマン大佐の前を退出し、日本海兵隊の下に向かった。
そして、その使者を捕虜としたのは、結果的に佐藤少尉だった。
更に使者の口上を受けて、佐藤少尉は直属の上官にそれを伝え、更に上官に伝えられた結果。
「貴官らの降伏を受け入れ、戦時捕虜として名誉ある処遇を行ないます」
「わざわざ提督自らが来られるとは」
リンデマン大佐は、南雲忠一中将自らが、砲台兼要塞の投降受け入れに来るとは想わず、恐縮することになった。
「フッドを沈め、長門を大破させた勇者達に、少しでも敬意を表したいと考えてのことです」
「其処まで仰られるとは」
リンデマン大佐と、南雲中将は暖かい会話を一時の間、交わした。
余りにも、話が急激すぎと言われそうですが。
これ以上に詳細を描いていくと、色々と話が乱れるというか、作者の私が話をまとめきれそうになく、思い切ってまとめました。
本当にすみません。
尚、これで第24章をまとめて、次話から第25章になります。
ご感想等をお待ちしています。




