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第24章―24

 ル・アーブル市街を巡る戦闘は、一週間余りも続くことになった。


 市街を舞台にして戦う以上、それこそ建物一つ一つを奪い合う戦闘にならざるをえない。

 更に言えば、大規模な支援を下手に行っては、味方撃ちの危険が高まると言う事態が起きる。

 この為に、それこそ歩兵の近接戦闘が繰り返されることになり、中々容易には市街地を制圧することは出来ないのだ。


 ル・アーブル市街を包囲して、補給等を切断することで、ドイツ軍を中長期的に弱体化させていくに止めるということも検討されたが、2個師団余りが立て籠もっている以上、それなりに看視の為の兵力、少なくとも1個師団余りを貼り付けておく必要が出て来る。


 そうなると、日本海兵隊の兵力の少なくとも4分の1を充てる必要がある、と試算された。

 それでは、日本海兵隊にしてみれば、前線兵力が減ることになるので、受け入れられない、ということになり、ル・アーブルを占領して、解放しようということになったのだ。


 後、ル・アーブル市民の生活等を顧慮したという事情もあった。

 英仏日等の連合軍の反攻開始以前、ル・アーブルには最前線ということから避難民が続出してはいたが、まだ住民がそれなりにいた。

 そうした中で、ル・アーブルを包囲に止めては、残されたフランス市民の生活に支障が出る、という判断もされたのだ。


(尚、ユダヤ人部隊を、ル・アーブル攻略に投じる、ということについては、日本海兵隊上層部のみならず、英仏両軍の上層部も難色を隠密裏に示した。


 下手に市街戦に投じては、それこそ復讐心に駆られているユダヤ人部隊は、怪しいモノは全て撃て、の精神から、ドイツ軍のみならず、住民に対してさえ、容赦なく射撃等を行なうのでは、と英仏日等の連合軍上層部から危惧されていたのだ。


 その為に、ユダヤ人部隊は、ル・アーブルを救援しようとするドイツ軍阻止の任務に充てられることになったのだ)


 ともかく。そう言った事情から、日本海兵隊は、ほぼ総力を挙げて、ル・アーブル攻略を試みることになったのだ。

 だが、その一方で、それは海兵(歩兵)や工兵が矢面になって戦うと言っても過言ではない状況となった。

 砲兵や戦車部隊は、出来る限りは市街戦に巻き込まれないように、又、外からのドイツ軍による救援作戦に備えた配置を採らざるを得なかった。


 野戦昇任している佐藤少尉は、海兵小隊長として、擲弾筒と軽機関銃による火力支援を組み合わせつつ、少しずつドイツ軍の将兵が立て籠もっている建物一つ一つを制圧する市街戦を行なうことに、内心では悲鳴を挙げざるを得なかった。


 かつての上海での戦闘を、佐藤少尉は思い起こした。

 あの時は、自分は米内洋六中佐とは別の部隊に所属していて、盧溝橋事件の発生に伴い、上海特別陸戦隊の緊急増援部隊の一員として、上海で戦ったのだが。

 あの時とは、自分は逆の立場で、ル・アーブルを制圧することになった。


 相手、ドイツ軍も市街戦ということで、そう大火力を投じてこない、というよりも、そもそもそんな兵器を余り有していないのだろうが、そうは言っても、軽迫撃砲等を使用して、自分達に砲弾を降らせてくる。


 それこそ、中隊長、更には大隊長に意見具申を行ない、15センチ臼砲までも、時として火力支援に投入して貰って、それでドイツ軍の抵抗を排除しているが、本当に難儀な戦闘だ。

 何とか少しでも早く、こんな戦場から抜け出したいものだ。


(ここに出て来る15センチ臼砲ですが、98式臼砲の原型といえる臼砲で、史実では開発、試作まではされたものの、制式採用されなかった臼砲になります。

 簡単な使用法を書いておくと、発射座を二人で、砲弾を一人で運んで、敵の拠点攻撃に用います)

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― 新着の感想 ―
>尚、ユダヤ人部隊を、ル・アーブル攻略に投じる、ということについては、日本海兵隊上層部のみならず、英仏両軍の上層部も難色を隠密裏に示した。 非常に妥当な意見だと思います。西部戦線は、史実世界の独蘇戦…
15センチ臼砲でドイツ軍が立てこもる建物に直接射撃。上海戦での戦訓が遺憾無く発揮されていると言えますね。 佐藤少尉も二度目の市街地戦で手慣れている感はありますね。もしユダヤ人部隊だったら虐殺が起きて…
市街戦の始まりか。ドイツと戦うならこの先何度もくぐり抜けないといけませんし、海兵隊の力を見せねば。
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