第24章―23
リンデマン大佐は言った。
「それでは、この(砲台兼)要塞を、最後まで守り抜こうではないか。そして、英仏日等の連合軍に、勇戦敢闘した末に投降するとするか。フッドを沈め、長門を大破させた自分達を、きっと英日の軍人は勇者として遇するだろう。それで、自分達の最後の意地と誇りを示そうではないか」
「そうですな」
「自分も同感です」
リンデマン大佐の部下達は、相次いで、リンデマン大佐の言葉に同意する意見を言った。
リンデマン大佐、及び部下達の視界内では、ダヴィデの星が描かれたユダヤ人部隊の軍用機、Pー39戦闘機が複数、飛び交っていた。
それを見たリンデマン大佐らは、改めて自分達が見て見ぬふりをしてきた、ヒトラー総統率いるドイツ政府が行っている、ユダヤ人に対する様々な迫害、強制収容所送り等について、自分達の良心に問いかける事態が引き起こされていた。
これ以上、ドイツ政府というか、ヒトラー総統に従って、自分達は本当に良いのだろうか。
確かに政府からの合法的な命令に従うのは当然のことかもしれないが。
だからといって、自らの良心に反するような、政府からの命令に従うのは、本当に正しいのか。
日英艦隊と戦って、自分達なりの意地を果たしたこともあって、リンデマン大佐、及び部下達は、ある意味では憑き物が落ちたような状況にあった。
そうしたことから、リンデマン大佐とその部下達は、この砲台兼要塞の防衛という任務を、出来る限りは果たした後で、速やかに英仏日等の連合軍に投降しよう、と考える事態が起きていたのだ。
そんな会話が交わされていた一方で、ドイツの砲台兼要塞からの砲撃が完全に止み、航空偵察等でも全ての砲が破壊された、と判定されたことから、日英艦隊は、ル・アーブル沖合から去ることになった。
何しろフッドが沈み、長門が大破しているのだ。
共に大損害を被ったと言える。
又、かなりの砲弾を撃っており、残弾が欠乏気味になっている艦艇も多数に成っていた。
(それだけ、ドイツの砲台兼要塞も、堅牢に造られていたのだ)
そうした状況から、日英艦隊は、表向きは砲弾補充の為に、ル・アーブル沖合から去ったのだ。
だが、このことは別の影響を引き起こしていた。
「厄介だな。折角の新型戦車の初陣なのに、活躍の場を失うとは」
「それなら、市街地に突入するか」
「止めておきます。むしろ我々は、外から救援に駆けつけるドイツ軍を迎撃すべきです」
「その通りだ」
西住小次郎大尉の愚痴を、米内洋六中佐は宥める羽目になっていた。
英仏日等の連合軍が総力を挙げたといえる、重爆撃機部隊や臨時に編制された戦闘爆撃機部隊、更には戦艦を始めとする艦砲射撃まで投入された猛烈な砲爆撃の嵐は、ノルマンディー半島やブルターニュ半島において、自分達と対峙していたドイツ軍の防衛陣地を、ほぼ全線に亘って大きく崩壊させていたが。
既述の事情から、ル・アーブル周辺に築かれたドイツ軍の防衛陣地に対する連合軍の艦砲射撃支援が事欠く事態が起きたのだ。
そうは言っても、それは大洪水の前に堤防の一部が辛うじて残っているようなモノだったのだが、それを活用した遅滞戦闘の結果として、ル・アーブル市街に多くのドイツ軍の兵士、2個師団相当が逃げ込んだ末に立て籠もる事態が起きていた。
英日軍は、ル・アーブル市街に対して、大規模な砲爆撃を断行することを主張したが、仏政府及び軍は、市民に多大な犠牲が出かねないとして、それを拒否したことから。
日本海兵隊4個師団が、ル・アーブル市街に突入して、ドイツ軍を掃討する任務を行なうことになった。
(尚、仏軍は、パリを始めとするフランス全土を速やかに解放しよう、といきり立っていたのだ)
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