第24章―15
そんな思惑が、米内洋六中佐自身やその周囲では交わされていた末、更には様々な不協和音が裏では奏でられた末に、1941年5月10日、ほぼ満月なのを活用して、英仏日等の連合軍の反攻作戦は発動されることになった。
これは満月を活用すれば、夜の闇が少しでも軽減されて、英仏日等の連合軍の夜襲等が容易になるとの考えから断行されたことだった。
だが、そうは言っても、様々な航空支援等を考えれば、最初の攻撃は朝に行われるのが当然だった。
そして、ル・アーブルやサン・ナゼール近郊において、重爆撃機部隊による大規模な空襲が行われる一方で、英仏日等の戦艦まで投入された艦砲射撃による地上部隊の支援が行われることになったのだが。
更に言えば、既述だが、それによって、ドイツ軍の防衛線の南北の両端を崩すことで、英仏日等の連合軍の地上部隊が急激に進撃して、上手く行けば理想的な両翼包囲を実現する筈だったのだが。
そういった思惑は、南側のサン・ナゼール近郊では、英仏両国の戦艦部隊等の活躍で上手く行ったのだが、北側のル・アーブル近郊においては、いきなり想わぬ蹉跌が生じることに成ってしまった。
「デカい。どう見ても、戦艦の主砲級の砲撃です」
「ふむ。噂に近かったが、全くのガセ情報を掴まされていた訳では無かったようだ」
「そんな風に悠然と構えていられる状況ではありません」
そんな会話が、海軍総隊総司令部では無かった、遣欧艦隊総司令部内で交わされることになった。
伊藤整一参謀長は、自分の顔面が蒼白になっているのでは、と想われてならなかった。
実際、自分が周囲を見回す限り、山本五十六司令長官以外の参謀達全員が、顔面を蒼白にさせている。
だが、それも当然のことだろう。
事前情報によれば、6インチクラスの大砲しか無かった砲台から、どう小さく見積もっても12インチ以上、恐らくは15インチの大砲4門の砲撃が自分達に向けられているのだ。
更に言えば、この砲台には、他に6インチクラスの大砲6門、4インチの大砲8門が備え付けられているようで、自分達に砲撃を浴びせてきている。
最も空襲が行われたところ、6インチと4インチの大砲は、高射砲兼務だったようで、対空射撃を行なう事態が起きたようだ。
(艦上からの目視偵察と、航空隊からの打電情報によればだが)
だが、そうは言っても、15インチクラスの大砲の砲撃が行われる中で、地上攻撃を行なう等、無謀と言われても当然の事態になる。
更に言えば、それなり以上の射角を15インチ砲は有しているらしく、偵察機からの観望が信じられるならばだが、少なくとも270度の射角があり、後方に回り込んでの攻撃も容易とは言い難い。
そんなことを伊藤参謀長は考えたが、山本司令長官が豪胆な態度のままでうそぶいた。
「日本の戦艦6隻に加え、英国の戦艦もフッドを始めとして、キングジョージ5世級戦艦2隻、クイーンエリザベス級戦艦3隻が、この場に居るのだ。
勿論、それを支援する巡洋艦、駆逐艦にも事欠かない。
日英艦隊の艦砲射撃で、砲台を沈黙させて見せる」
山本司令長官の言葉を聞き、伊藤参謀長を始めとする多くの面々が冷静になった。
だが、他の参謀達はともかくとして、伊藤参謀長としては、不安を覚えてならなかった。
確かに戦艦12隻を始めとする圧倒的な戦力が、この作戦に投入されている。
だから、最終的には自分達は勝てる、と自分は考えるが。
そうは言っても、それなり以上の損害を覚悟せねばならないのではないだろうか。
何しろ15インチ砲による砲撃なのだ。
日本の戦艦は様々な改装が行われているが、長門型以外の戦艦が耐えられるのか、というと、どうにも不安を覚えて仕方がない。
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