第24章―14
実際、このことは本来ならば支援が増大することを喜ぶ筈の地上部隊の一部にも、不安の想いを抱かせることになっていた。
米内洋六中佐は、師団直轄の戦車大隊長ということもあって、ざっくばらんに師団長の栗林忠道少将に訴える事態に成っていた。
「確かに戦艦を投入し、更には本来ならば戦略爆撃を行なう重爆撃機部隊や、爆撃機の護衛戦闘を行なっている単座戦闘機部隊まで、自分達の直接支援に投じる、というのは喜ぶべきなのでしょうが。
本当に誤爆等の事態は起きないでしょうか」
「確かに、その危険は否定できないな」
米内中佐の言葉に、栗林少将は同意する言葉を吐いた。
「後、この反攻作戦の基本構想は、シンプルに両翼からの包囲を目指すモノで、私もそう問題を覚えませんが、余りにも前提が楽観的過ぎるような気がしてなりません。
確かにドイツ軍の精鋭部隊が、ユーゴスラヴィア王国の内戦を鎮める為にフランス本土から引き抜かれた、という情報は、それなりに正しいようですが。
本当に暫くユーゴスラヴィア王国内の治安維持に当たるのでしょうか。
内戦を取り敢えず鎮めた段階で、フランス本土に戻ってくるのでは。
更に言えば、それは我々の多くが想定しているよりも、かなり早い気がしてなりません」
米内中佐は、更に言い募ることになった。
「自分も、そういった危険が皆無とは考えにくい」
「ならば」
栗林少将は、米内中佐の言葉を聞き終えた後、暫く考えた後で言い、米内中佐は更に言い募ろう、としたが、栗林少将は身振りで、それ以上の言葉を遮った後で、自らの考えを言った。
「それならば、これ以上の作戦案が提案できるのか」
米内中佐は絶句して、自らも暫く考えた後で言った。
「確かに仰る通りです」
「だろう、自分が考える限り、不安を覚えるが、他にこれ以上の作戦は無い。
そうである以上、この作戦を断行するしかないだろうが」
最後は米内中佐を叱るような言葉を、栗林少将は発して、米内中佐は黙って引き下がった。
米内中佐は、栗林少将の言葉を受けて引き下がった後、黙って考えざるを得なかった。
栗林少将が言われる通りなのだ。
他にどんな作戦があるのか、と言われると、自分も言葉に詰まらざるを得ないし、現状で考える限り、最良の作戦と言わざるを得ないのだろう。
だが、妻の久子からの私信(手紙)や、カテリーナ・メンデスからの私信を考えるならば、どうにも不安を覚えざるを得ない。
全く悪気は無いのだろうが、何しろカテリーナからの私信の内容に至っては。
今回の作戦計画については、不安を自分は覚えて仕方がない。
地上部隊への爆撃任務に、自分や部下達は当たることになったが、敵のドイツ空軍戦闘機の襲撃を受けた場合、味方への誤爆の危険を認識しても、爆弾を捨てて対処せざるを得ない、とまで書かれていた。
何だか手紙の内容を深読みし過ぎなのだろうが、自分達が進撃する際、カテリーナやその部下達から誤爆されそうな気がしてならないのだが、自分の考え過ぎだろうか。
それこそ、自分の考え過ぎなのだろうが、カテリーナからの不倫の申し出を断った為に、逆恨みされて刺されるどころか、爆撃されるような目に遭わせますよ、とまで脅されているような気がして、どうにもならないのだが。
更に深読みすれば、カテリーナの下には、妹のアンナから、自分は小林亨二と結婚して、軍医に成ろうとしている、という手紙が届いている筈だ。
カテリーナにしてみれば、そのことさえも自分の癇に障ることで、どうにも腹立たしい考えが浮かんでならないのではないだろうか。
現実と空想の区別も付かないのか、と言われそうだが。
そんな物騒な想い、考えが、米内中佐の内心で浮かんでならなかった。
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