第24章―13
そうした一環から、ル・アーブル周辺に日英の戦艦等を展開させ、又、サン・ナゼールには英仏の戦艦等を展開させて、艦砲射撃による地上部隊の支援を行わせよう、ということになった。
尚、言うまでも無いことだが、それこそ本来ならば、ドイツ本土への戦略爆撃任務に専念する筈の重爆撃機部隊まで、ドイツ陸上部隊への直接攻撃に投入され、更には護衛戦闘機部隊までも、臨時に戦闘爆撃機として転用されて、地上部隊攻撃に使用されることになっている。
このことには、英仏日等の連合軍内部からも、それなり以上の批判の声が挙がった。
本来の任務外のことに、航空隊等を転用するのは、余り望ましいことではない等の批判である。
例えば、戦略爆撃任務に当たっている重爆撃機部隊は、こういった地上部隊への爆撃訓練を行っておらず、幾ら事前協議を行い、更に最終的には地上から爆撃目標を指示する等と言われても、味方部隊を誤爆するリスクを完全には回避できない、と主張して難色を示した。
又、護衛戦闘機部隊にしても、それこそ搭乗員訓練の一環として、地上目標に対して爆撃訓練を行ったことはあっても、実際に戦闘機乗りになって以降は、そういった爆撃訓練を行ったことが無い者ばかりといって良かった。
そうしたことから、流石に立場上、上層部に意見具申等は出来なかったが。
米内久子は、独軍の地上部隊への爆撃任務を行なう重爆撃機部隊の搭乗員の間で、不安というよりも不穏な声が挙がるのを、立場上、耳にすることになった・
例えば、本当に自分達は精確に独軍の地上部隊を爆撃できるのか、それなりの高度からの工場等への爆撃を自分達はずっと行っており、いきなり地上部隊に対する爆撃を行なえ、と言われても、誤って味方を誤爆してしまうのではないか。
更に言えば、自分達の多くが、元を糺せば、海軍の陸上攻撃機や飛行艇に乗り組んでいたのが、重爆撃機に乗り組むことになって、このような場所にいるのだ。
日本にいる頃は、艦船攻撃訓練を主にやってきており、確かに航行中の水上艦に対する攻撃よりも、固定目標と言える陣地に籠った独の陸軍部隊等を攻撃するよりも容易いだろう、と言われても、そう素直に肯定する意見を吐けない等までの声が、部隊内で挙がるのを、久子は耳にした。
久子は考えた。
確かに搭乗員達が不安、不穏の声を挙げるのも、最もだ。
本来以外の任務を、いきなり行え、と言われても、上手くできるだろうか、と自分でも考えてしまう。
又、カテリーナ・メンデスも、似たような考えを抱いていた。
カテリーナの場合、自分達のPー39戦闘機部隊まで爆弾を抱えて、地上攻撃に参加するように指示を受けたのだが。
「いざとなったら、味方の上でも爆弾を捨てるつもりで、出撃しなさい」
とこっそり部下達にささやいた。
「良いのですか。流石に味方に爆弾を降らす訳には」
3人の部下は、カテリーナの言葉に驚愕して、そこまでは言ったが、相手が相手である。
直属の上官であり、又、ユダヤ人部隊のトップエースが相手なのだ。
それに対して、カテリーナは更にささやいた。
「ともかく無茶よ、確かに地上爆撃訓練を、搭乗員としての最終課程で行ってはいるけど、その後、全く訓練等しないまま、地上攻撃を行なえなんて。
貴方達を死なせる訳には行かない、爆弾を抱えたままでは空戦はできないわ。
敵機の襲撃があったら、何処でもすぐに爆弾を捨てて、応戦しなさい」
「はい」
部下達は、カテリーナの声で覚悟を固めた。
カテリーナは考えた。
本当に何としても攻撃を成功させたいのだろうが、幾ら何でも無茶だ。
こんなことをしては、却って貴重な搭乗員を失うことになりかねない。
上層部も、少し考えるべきだ。
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