第24章―9
さて、何故に伊藤整一海軍総隊参謀長が、山本五十六海軍総隊司令長官の言葉を、深刻に捉えたのか、この際に補足説明をするならば。
この当時(この世界のみならず、史実世界でも)、軍艦が地上砲台と砲撃戦を展開するのは、軍艦側が圧倒的に不利というのが、史実の第一次世界大戦におけるガリポリ上陸作戦等から、言うまでもない常識だ、と世界中の軍人に考えられていた、と言っても過言では無かった、という背景がある。
実際、軍艦と地上砲台を比較すれば、地上砲台の方が遥かに安定した状態で砲撃を行なうことができ、更に言えば、地上砲台の方が、射撃訓練等の研鑽を磨いた上で、軍艦と戦えるのが自明なのだ。
(そう呟くと、日本の幕末の薩英戦争等からすれば、軍艦と地上砲台では、軍艦が圧倒的に有利なのは、歴史的に自明のことだ。
そして、史実の第二次世界大戦で、戦艦の艦砲射撃が地上支援任務をどれだけ果たしたことか。
そんな史実からすれば、軍艦と地上砲台を比較したら、軍艦が圧倒的有利なのだ。
と以前に指摘されましたが。
私が調べる限りは、どうにも逆が基本の気がしてなりません。
例えば、ハワイ、オアフ島攻略作戦を日本海軍が断行できなかったのは、オアフ島には40サンチ砲を始めとする地上砲台が整備されていて、それこそ日本の戦艦が総力を挙げて艦砲射撃を浴びせても、過半数の日本の戦艦が沈没するリスクがある、と懸念されたからだとか。
私の調査が誤っていたら、本当にすみませんが、基本的にはですが、軍艦と地上砲台が撃ち合えば、地上砲台の方が有利なのではないか、と私は考えざるを得ません)
だから、もしもドイツが建造中止になった戦艦の主砲を、これまでの戦訓から対艦砲射撃に備えて、砲台に転用していたならば、日本のみならず、英仏等の戦艦にとっても脅威になるのは間違いない。
そして、ドイツの戦艦の主砲が、本当に15インチならば、普通に考えれば、日本の戦艦でそれに真面に射撃に耐えられるのは、長門型戦艦2隻しか存在しない。
(この世界では、大和型戦艦は設計図段階で建造が中止されており、その費用が転用等されることで、海兵隊の整備等が行われています)
何処にドイツの戦艦の主砲が、砲台に転用されて配置されたのか。
英国政府、軍部は懸命に探っているのだろう。
更に、仏本土内のレジスタンス等も協力しているのだろうが、何処に配置されているのか不明とは。
更に言えば、大よその場所が分かっても、精確な場所が不明では、そういった砲台を航空攻撃で破壊するのは極めて困難なことに成るのが、目に見えている。
それこそ直撃弾、それも戦艦の主砲弾と言える1トン前後の徹甲爆弾の直撃に耐えられるように、そう言った砲台は造られるだろう。
つまり、至近弾では無駄弾になる公算が極めて高い訳だ。
伊藤参謀長は、色々と考える程に、ドイツの15インチ砲が備え付けられた砲台が、それなり以上の危険を有するモノと考えざるを得なかった。
伊藤参謀長の懸念を何処まで深刻に受け止めているのか、山本司令長官は豪胆な態度のままで、次のように言い放った。
「ともかくだ。新型(の大和型)戦艦が建造されていない以上、我々にとって長門型戦艦が切り札だ。そして、改装を積み重ねた長門と陸奥ならば、15インチ砲弾と言えど、それなり以上に耐久出来る筈だ。この際、長門と陸奥こそ、世界最強の戦艦だ、と世界に知らしめようではないか」
「確かにその通りですな」
山本司令長官の言葉に気おされたこともあって、伊藤参謀長はそう言って、更に考えた。
確かに長門と陸奥で、砲台破壊に失敗しては、何を持ち出せば勝てるのだろうか。
我々は、何としても勝つしかないのだ。
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