第24章―8
少なからず話が逸れたので、本題に戻すが。
そういった山本五十六海軍総隊司令長官の主張から、金剛型戦艦4隻と妙高型重巡洋艦4隻等が、日本本土及び近海防衛の為に残される代わりに、長門型戦艦2隻、伊勢型戦艦2隻、扶桑型戦艦2隻を合わせた戦艦6隻、高雄型重巡洋艦4隻、最上型軽巡洋艦4隻等が、欧州に向かう事態が起きていた。
(尚、言うまでも無いことかもしれないが、赤城、加賀、蒼龍、飛龍の正規空母4隻も、欧州から帰還した後で、改めて日本本土で航空隊の補充、再編制を行なった上で、欧州に派遣されている)
「英仏と肩を並べて、同盟国として戦っていて、更に米国がレンドリースまで、色々と制限付きながら行っているのに、米国が日本に戦争を吹っ掛ける危険がある、と主張する等、博打打ちとして考える限り、アリエナイ事態と考えるのだが。私の考えは楽観的過ぎるかな」
「いえ。そんなことは無いでしょう」
山本司令長官と、伊藤整一参謀長はやり取りをした。
伊藤参謀長は、自分なりに考えた。
どうのこうの言っても、米国は民主主義国家だ、米国が今、日本と戦うということは、独ソに米国が加担すること、と言っても過言ではない。
そして、英仏日等のみならず、米国世論においても、ソ連はともかくとして、独は侵略主義国家として危険視する声が極めて強いのが現実だ。
そうした現実下において、米国から日本に戦争を吹っ掛けること等はアリエナイことだ。
更に言えば、英仏日等に様々な兵器等がレンドリースということで、(後で実は違うのが判明することになるのだが)無償で提供されている現実までがある。
無償で兵器等を提供している現況で、その国に自分から積極的に戦争を吹っ掛ける等、幾ら何でもアリエナイこととしか言いようが無い、ことではないだろうか。
そんな風に伊藤参謀長は、考えを進めたが、山本司令長官の考えは、更にその先を行っていたようだ。
「金剛型戦艦4隻が、地上への艦砲射撃で偉効を挙げた以上、長門他の戦艦6隻にも、地上への艦砲射撃で偉効を挙げさせることで、令名を高めたい、と自分は考えるが、我が儘かな」
「いえ、必ずしも、そうは言い難いと考えます」
「うむ。更に言えば、それなりに英仏日等の航空部隊は、航空攻撃を加えることで、ドイツ軍の陣地建築等の妨害を試みてきたようだが、全てが上手く行ったとは言い難いらしい」
山本司令長官と伊藤参謀長は、更なるやり取りを続けた。
「ほう」
伊藤参謀長が相槌を打ったのに対して、山本司令長官は、少し声を潜めるように言った。
「塩沢軍令部総長から、話があった。塩沢軍令部総長は、知英派、国際派ということもあって、英海軍内にそれなりの人脈がある。
その人脈から、ドイツがノルウェー侵攻作戦失敗に伴って、建造中止になった新型(史実のビスマルク級)戦艦の主砲が、ノルマンディー、ブルターニュ半島からの連合軍侵攻阻止の為に転用されたやも、という情報が流れて来たらしい」
「えっ」
山本司令長官の言葉に、伊藤参謀長は絶句した。
「これが確度の高い情報なら、公式に英国から日本に流れてくるのだが、確度が低いので、密やかに塩沢軍令部総長の下に情報が届いたらしい。誤情報を流すとは、英国(政府、軍)は信じられない、と日本陸軍等が難癖を付けると懸念されたらしいな」
山本司令長官は、ざっくばらんに伊藤参謀長に言い、伊藤参謀長の顔色は変わった。
「そんなことから、長門がこの地に赴いた訳だ。長門ならば、ドイツの新型戦艦の15インチ砲に対処できるだろうからな」
山本司令長官は、更に言って、虚空を睨んだ。
伊藤参謀長は考えた。
これは本当に危険な事態が起きた、と言えることではないか。
話中で、最上型軽巡洋艦という描写がありますが、誤記ではありません。
この世界では、最上型を重巡洋艦に改装する費用が惜しい、更に言えば、大和型戦艦が建造中止になった、という事情から、最上型は軽巡洋艦のままなのです。
ご感想等をお待ちしています。




